7月、宮崎駿監督の新作「君たちはどう生きるか」が上映開始されました。おそらく、本作は宮崎駿監督の映画としては最後の作品となるでしょう。内容の有無にかかわらず、多くの人がこの映画を映画館で見たいと思っていることでしょう。私もその中の一人ですが、映画館へはもう十数年行っていません。劇場版けいおんや涼宮ハルヒの消失なども見ることはありませんでした。深夜アニメから劇場版への移行が増えた時期は映画館へ行けず悲しい思いをしていました。映画館での鑑賞は自分にとってはかなり苦しいのです。
私が最後に映画館に行ったのは、小学生の頃の子供会のイベントの時だったかと思います。当時は発達障害という概念はあったものの、親も自分自身もそのことに気づいていませんでした。その頃、何度か映画館に連れて行かれたことがありましたが、終わり際には毎回頭痛がしてかなり疲れていました。映画館の音が大きすぎると感じ、台詞一つ一つが人の声とは思えないほど大きく頭へ響いていました。また、サブウーハーの効き具合が強すぎて、アクションシーンなどが連続してくると身体が揺さぶられて気持ちが悪くなってしまうのです。さらに、映画館は人が多くて窓もなく、薄暗い雰囲気であり、匂いも強く、居心地がよいとは言えません。プロジェクターであっても光が意外にまぶしく、これもまた頭痛を誘発してしまうのです。
そうして、映画館に行くことが必ず具合が悪くなってしまうため、最近はずっと映画館に足を運んでいませんでした。音楽や歌は好きですが、カラオケやコンサート、ライブも同じ理由で普通に楽しむことができません。だからこそ、自宅で好きなように楽しめるイヤホンやヘッドホンといったホームオーディオが、私にとっては映画館やカラオケ、ライブ会場の代わりでした。この感覚は、オーディオを始めた当初から変わりませんでした。もともと外出することがあまり好きではなく、幼少期から自宅で一人遊びすることが多かったですし、小中高と友達の家に遊びに行くこともほとんどありませんでした。他人の家も匂いや緊張感が原因で具合が悪くなってしまっていました。

映画館は苦手なのですが、宮崎駿監督の最後の作品かもしれないと思うと、やはり一念発起して行かなければならないと感じました。公開初日の7月14日の午前中に行こうと思っていましたが、その日は朝から頭が痛くて延期しました。ネタバレや他人の感想を見る前に映画を見ることを目標にしましたが、ネットという広大な情報の荒波に揉まれれると感想や考察が目に入ってしまうんです。そんな中、暇だったので岡田斗司夫氏の動画をYoutubeで見て、ついついネタバレを食らってしまいました。そして、激しい賛否両論が巻き起こっているこの映画に対する気分がだいぶ萎えてしまいました。戦時中の話、ちょっとグロいシーンもある、内容が意味不明……。あれだけ気合いを入れて初日の1番に見に行こうという気持ちはどこかに消えてしまい、映画館へ行く気にはなりませんでした。
しかし、転機が訪れました。米津玄師の「地球儀」という主題歌です。映画公開前からわかっていたことですが、主題歌が米津玄師の曲だという情報に驚きと疑問を抱えながら、映画「君たちはどう生きるか」の主題歌「地球儀」をとりあえず聴いてみました。すると、想像を超えてくる素晴らしい曲だったんです。さらに、音質も素晴らしい。映画を見に行った人たちの中には、「この映画なんだかしらないけど泣ける」という人もいると聞きましたが、確かにこの曲が映画の最終版で流れたら泣いてしまうかもしれないと感じました。そうして、ちょっと萎えかけていた気分は一変し、再び映画館へ行く気になっていたのです。

昨日、久しぶりに映画館に足を運びました。イオンシネマとユナイテッドシネマのどちらかで迷いましたが、上映時間とシートの座り心地でユナイテッドシネマを選びました。これまで行ったことがあるのはイオンシネマで、ユナイテッドシネマは初めてです。前日から少し緊張し、昼食も控えめし、真夏の太陽が燦々と降り注ぐ中、映画館に向かいました。映画館でも障害者手帳が使えることを思い出しました。手帳を見せるだけで料金が同伴者も千円です。事前情報では、映画館の座席はガラガラだとの話でしたが、夏休みが始まったせいか人は少し多いように感じました。それでも席の3割くらいは空いていました。
映画館に入ると、ポップコーンの匂いがむっとして少し気持ち悪さを感じつつ、映画の始まりを待ちました。気分が悪くなったら常に避難できるように出入り口近くの通路側の席を選びました。座るとすぐに広告が永延と流れ続け、さっそく音がデカイんです。BOSEのノイズキャンセルヘッドホンをつけていてもまだ音がデカイ。そんなこともあろうかと、モルデックスの耳栓を鞄に3ペアくらいは常備しています。広告を15分くらい見せられた後、ようやく映画が始まりました。この時点でかなり帰りたい気分になっていました。本編がスタートすると少し落ち着き、BOSEのヘッドホンは外して耳栓だけで見ていました。ただ、映画は本当に長く感じました。普段椅子にじっと2時間座っていることはほとんどありません。ブログを書くときもほどよく休憩しながら書いているし、周りには他人がいません。
慣れない環境と爆音に耐えつつ、映画のラストシーンでようやく耳栓を外し、米津玄師の「地球儀」を聴きました。ある意味、映画館での音響を初めてちゃんと体験しました。オーディオを始めてから映画館の音はあまり良くないと聞かされてきましたが、やはり音質については自宅のシステムで聴いた方が音が小さいのにしっかり聞こえることがわかりました。それでも映画のラストと宮崎駿へのお別れのような感じで、「地球儀」が流れる真っ青なエンドロールに胸がじんとしました。泣けるかなと思っていたのですが、疲労で泣いている余裕はありませんでした。人生の節目の大事な時にもいつもそうです。イベントに参加するより、とにかく疲れているんです。慣れない環境や人と外出してい状況で疲労感が全てに勝ってもうすでにほぼ詰んでいる気がします。

BOSEのノイズキャンセルヘッドホン。必需品。

久々の映画鑑賞で、宮崎駿の映画を見ることができたことは喜びつつ、それ以上に映画館について感覚過敏について、そしてホームオーディオについて考えるきっかけとなりました。これまでの十数年間、自宅のオーディオで音楽を聴くことが生活の中で大きな喜びであることを再確認しました。映画館は居心地が悪く、気持ちが悪くなり、頭痛に悩まされることが多いですし、長時間の視聴は物語を楽しむどころではありませんでした。そういった理由から、障害者手帳が活用できたり、自宅に自分好みのオーディオシステムを整えることが重要だと感じます。
オーディオ趣味については、音楽を聴くだけでなく、映画やアニメを自分の好きなようにリラックスして楽しめる環境ということが非常に大きなアドバンテージがあると感じます。また音だけを聴いても、どうやっても自宅のオーディオの方がずっと音が良く、聞きやすいです。このことはオーディオショウなんかでも同様だと思います。さらに、最近は感覚過敏が以前より悪化しており、外出する際には黒いサングラスとBOSEのノイズキャンセルヘッドホン、マスクが手放せません。忘れてしまうと、疲労感が何倍にもなってしまいます。

Amazon モルデックスの耳栓 鞄にいつも3ペアくらい入れている

自宅でゆっくり音楽を聴くのが一番の娯楽となって早十数年、自宅のオーディオシステムは異様に豪華になってしまいましたが、シアター環境だけは非常に簡素です。映画館で見なくても、映画は、映像も音もダイナミックレンジが大きすぎて疲れてしまいます。明暗が大きすぎて普通のテレビで映画を見ると目が疲れるため、ブログを書く際もEIZOのモニターでコントラストを下げて暗くして見ています。そのため、普段のYoutubeの動画編集などは正確な色や明るさを再現できないのです……。そして、音に関しても、普通のテレビで映画を見ても第二ミックレンジが大きすぎて疲れてしまいます。音量を下げると話し声などが聞き取りにくくなりますので、映画を見る際は音量を上げなければならないことも原因の一つです。自分のYoutube動画には音量が控えめで効果音が少ないのは、うるさいとすぐに耳が疲れるからです。また、映画を見るという行為自体が疲れるため、ソファーで横になっても2時間の映画を見るのはまあまあ大変です。普段は30分程度のアニメがちょうど良いです。金曜ロードショーなどのCMが多い番組は実は都合が良いと感じます。なので映画のBDなんかを買うことはほとんどありません。

リビングのシアター環境。ステレオスピーカーと43インチのLGのテレビだけの簡素な作り。

映画館へ足を運びながら、もしかしたら自宅に、目にも耳にも優しいリラックスして鑑賞できる自分専用の小さなホームシアターがあれば良かったかな、という思いが頭をよぎりました。しかしながら、実際には既にリビングにそのような環境が整っているように思われます。映画との相性はあまり良くないようです。
私は静かに音楽を聴いたり、気軽にアニメを楽しんだりしつつ、小さくリラックスして日々を過ごすことが日常の営みとなっております。普段の普通の生活を営むことが精一杯であり、自宅で穏やかに過ごすことが何よりも至福の時と感じております。
次回は、りゅーとぴあのコンサートホールでクラシック音楽でも聴きに行こうかなと考えております。そこでまた疲れたとため息をつきながら、ブログで振り返えるのです。