2019年に新築した我が家は、オーディオの家です。オーディオルームはありますが、シアター環境は一切設置していません。そのため、オーディオルームというより、リスニングルームや音楽室に近い印象です。感覚的には、このオーディオルームは音楽室と呼んでいます。音楽室は、ステレオシステムを鳴らすことに特化しています。そのメリットと、その後の様子について少しご紹介したいと思います。
うちのオーディオルームのシアター環境
私の現在の住まいには、オーディオルームはありますが、シアター環境は一切設置していません。一応リビングに小さなリビングシアターを楽しむための設備はありますが、マルチチャンネルやプロジェクターの設置には一切対応していません。専用のオーディオルームを設計する場合、多くの人はプロジェクターなどの映像設備も組み込むことが一般的です。特に今の時代、映像コンテンツが豊富なので、音だけを楽しむというのはオーディオマニアの中でも少し珍しいかもしれません。最初から映画や巨大スクリーンで映像を楽しむことを考えず、オーディオルームの設計にはそれらの要素を一切含めませんでした。
天井や壁にマルチチャンネル用の配線や配管を埋め込むこともなく、プロジェクターやスクリーンを設置するスペースや下地も設けませんでした。また、意図的に窓を大きくし、自然光がたくさん入る部屋にしています。さらに、音楽室にはテレビも置く予定がないので、テレビ配線やHDMIの配管すら設置していません。唯一あるのはPCと作業用のモニターそしてiPadだけです。アニメやYoutubeを27インチのPC画面やiPadでちまちまと楽しんでいます。その際の音声は、一応メインスピーカーから出力することができますが適当にならしていることが多いです。アニメや海外ドラマなどを好む方には、シアター環境を排除する人の方が珍しいかもしれませんが、音重視で映像はほどほどのスタイルで楽しむことを選びました。
シアターを排除した恩恵は意外に多い
1.居心地の良さ
そんなシアターを排除した、少しばかり珍しいオーディオルームですが、シアターをなくすことで、音楽を聴くことと部屋の居心地に大きな影響を与えています。まず、シアターのために部屋のカラーを黒やグレーにする必要がありません。プロジェクターを導入する場合、白い壁や白っぽい床など、反射が少ない配色が求められますが、ここではシアターをスルーしているので、床材、壁、カーテンなども明るい色や柄入りのものを使うことができます。フローリーングは、元気の出るカラーのカバザクラを取り入れました。壁は珪藻土で仕上げ、オフホワイトの優しい色合いを採用しました。さらに、サブウーハーを使わないため、防音に関してもD35以下の比較的簡素な設計となっています。
強い防音や光の侵入に気を使わなくても良いため、窓を大きく取り付けることができました。正面の出窓は、ある意味でこの部屋のスクリーンのようになっています。自分好みの明るいトーンと自然な色合いで、太陽光がたくさん入る、過ごしやすい部屋が完成しました。
一般的には4Kプロジェクターなどを導入する際に、床も天井も黒やダークブラウンを使うケースが多く、窓も最小限の大きさにするかなしいことが多いです。こうした環境では、映像の綺麗さや防音の高さは得られるかもしれませんが、居心地が悪く、地下に閉じ込められたような息苦しさを感じてしまいます。一方、ここではシアターを排除したことで、療養ひきこもり環境として最適な部屋ができました。見た目もシンプルで心理的に静かな部屋です。
通常のシアターっぽいオーディオルームは、普通の人からすると、仕事から帰ってきて夜の間だけ自分の空間で静かに過ごすという意味合いでは最適かもしれません。しかし在宅ワークなどで、1日中オーディオルームで過ごすとなると、太陽光も入らない薄暗い空間は気分を落ち込ませるどころか鬱になるかもしれません。
結果的に、このオーディオルームはシアターを排除したことで、心地よい空間となり、外見もシンプルで落ち着く部屋になっています。
2.部屋がシンプル故に簡単に音が良くなった
シアターを排除したことで得られた2つめのメリットは、ずばり音質です。プロジェクターを導入しないことやマルチチャンネル環境を捨てることで、ステレオのためだけにフォーカスし部屋を設計できます。その結果、部屋の構造がシンプルになり、調音が容易になりました。同じ規模の部屋でも、ステレオシステムだけの部屋と大型モニターやスクリーン、マルチウェイのスピーカーシステムがある部屋では、前者の方が音を作るのが簡単になるはずです。
FORMUSICの部屋のなかでも、シアターを排除したことで癖のないかなりフラットな仕上がりになったようです。同社の部屋では、シアターとオーディオルームを両方設置していることが多いため、ほとんどの部屋にはスクリーンが取り付けられています。ただし、この部屋はスピーカーのためだけに設計されているため、シンプルに音が良いです。音が良くなかったらとんでもない本末転倒となってしまいますが…。オーディオルーム作りでは、シンプルな部屋作りでも失敗するケースはあると聞きはしますが。
シアターを排除しステレオに一貫したことで、音楽を純粋に楽しむための理想的な環境が実現できました。部屋がシンプルであるため、調音が容易く行き届き、音のクオリティを最大限に引き出すことができました。
3.低コストのオーディオルーム
シアターを諦めることで、このオーディオルームは防音も最小限で、設備も簡素に済んでいます。設計から施工まで、部材も減らせたため、コストを抑えることができました。何よりも、このオーディオルームは空間を大きく取ること以外は、案外普通の部屋とあまり変わらないのです。細かいところでは、拘りが随所に見られますが、それはオーディオルームだからというよりも、単に居心地を良くするための工夫という面が大きいです。音楽を聴くためのオーディオルームとしては、かなりコストパフォーマンスの高い部屋だと思います。シンプルでありながら、ある程度普通に設計されているからこその居心地の良さと音の良さを両立できたと思います。
オーディオルームを作る際に思い切ってシアターを一切入れない選択肢はアリだと思う
ステレオシステムのためだけにシンプルに作れるからこそ、コストも小さく済み、大きな失敗もしにくいと思われます。オーディオルームに限らず、いろいろな要素を詰め込みすぎると、こちらが良くなればあちらが微妙になるシーソーゲームに陥ってしまいます。最初から音楽を聴くことに重点を置くことで、設計も建築も大幅に楽になります。何よりもリスニングルームは、見た目や居心地が悪くなりがちです。シアーターの縛りがなくなるだけで、デザインに注力できるのは大きなメリットだと思います。それでも、ホームシアターもまた、リスニングルームと同様に一つの夢の設備であり、映画やライブ映像などを愛する人にとっては極上の住居環境です。”シアターを排除するべき”というより、何が一番大事なのか見極めて、とにかく割り切って作ることが大事だと思います。
普通の部屋ではないリスニングルームという特殊な空間だからこそ、部屋の居心地が良いと感じられることに大きな意味があります。ホームオーディオといえどやはり安住の地、自宅なので、何よりも居心地が重要です。シアターが必要ない自分にとって、ある程度普通の部屋で暮らせることは、思っている以上に大きな意味がありました。もしもう一度家づくりがあったとしても、やはりシアター環境のない明るい部屋を作ると思います。住宅街に建つオーディオルームとしては、うちのような明るさのオーディオルームは非常に珍しいでしょう。音だけに注力した部屋で、居心地を優先するというのもまた非常に贅沢な部屋だと感じます。新築するとなると、せっかくだからあれこれ設備を入れたくなる気持ちも分かりますが、音楽を楽しみ、普通に生活するためのシンプルな空間が作れたことが大変大きな喜びです。
基本的に、私はアニメも映画もリビングの43インチの適当なテレビで十分です。少し大きなテレビにすることはあっても、プロジェクターを導入する予定はまずないでしょう。
以上、音と居心地に割り切って作ったリスニングルーム”音楽室”のお話でした。