カジノASMR動画の発端
2023年初夏の7月、YouTubeチャンネルの動画が地味にバズっています。そのきっかけは、2021年2月にアップしたブラックジャックASMRの動画です。その年、コロナショックにより倒産したカジノからデッドストックになったトランプが格安で販売されていました。ペンギンマジックでは一つ2.4ドル、インポッシブルカンパニーでは一つ270円で投げ売りされていました。
そして、手に入れたのはiSle CasinoのカジノとLakeSideCasinoグレードBeeトランプでした。ポーカーにはまりラスベガスの動画を沢山見ていた私は、このカジノグレードのデックを手に入れた時、かなりテンションが上がりました。その勢いで、2013年にポーカーをやるために買って放置していたポーカーチップを引っ張りだし、一人ブラックジャックをプレイして楽しんで遊んでいました。さらに、その様子を、ステレオ録音しながら撮影して、YouTubeにアップしてみました。当初は誰も興味を持たないだろうと思っていた動画は、しばらくの間、1日の再生回数が10回以下で推移する不人気の動画でした。さらに、YouTubeのAIからお節介なことに、これまで上げてきた動画と全く違うジャンルの動画をアップロードするとチャンネルイメージが壊れ、再生数が下がるよと警告される始末でした。
動画をアップロードしてから1年数ヶ月が経った、2022年の春、突然の再生数の増加=バズりが起こりました。これにはかなり驚き、うれしかったことを覚えています。何よりも驚いたのは、バズっているのが日本国内ではなく、アメリカやヨーロッパなどの英語圏が中心であることです。最初の1年間の再生数はたったの9000回程度でしたが、バズり初めて2ヶ月で3倍の4万回まで再生されるようになりました。そして、2年半経った現在、再生数は6万回程度です。
カジノASMR動画とは?
私が一人でブラックジャックやバカラなどのカジノゲームをロールプレイしている様子をRODEのマイクでステレオ録音しながら撮影したASMR動画です。この動画ではディーラーとプレイヤーの一人二役をロールプレイしています。トランプやポーカーチップの音、そして手でマットを叩く音なども楽しみながら、手の美しさや動きの美しさを見て楽しむ内容となっています。このようなカジノゲームロールプレイの動画を作ってアップロードしたのは、どうやら私が世界で初めてのようです。日本語でも英語でも、眠れる、落ち着く、手が綺麗、動きがシルキーで美しいなどの、この動画はかなり多くの人に好評をいただいています。視聴者様からの反応が非常に良く、喜んでいただけているようです。
※この記事は7千字あります。全て見るのに30分以上かかります。バックグラウンドで動画を再生しながら見てください。
プチバズからの2本目の投稿と2回目3回目のバズが発生!そして失敗…
なんとなく作ったカジノASMR動画が小さなバズを起こしたのに気づいたのは2022年の春でした。その後、続編のASMR動画を制作しようと思いつつも、次の動画を完成させるまで3ヶ月もの時間がかかってしまいました。非常に大きなチャンスを逃してしまったと思います。Part2では一本目よりもやや長く、クオリティも向上させてさらなるバズを狙いました。結果として、この動画は現在では34万回の再生回数を誇り、私のYoutubeチャンネルの中でも最も再生されている動画の一つとなりました。ただし、1本目のバズからあまりにも時間が空いてしまったため、アップロードしてからの勢いは想像以上に弱かったです。
2度目のバズを狙ったPart2の動画投稿から半年後の2022年の春、再び動画が伸び始めます。1本目のバズの2倍程度の勢いがありました。半年前には再生数が1万回以下だった動画が、7月には10万回を超える再生数となりました。再生数だけでなく、100件以上の英語やスペイン語のコメントと5000回以上の高評価が付きました。しばらくすると勢いは落ちていきましたが、それでも半年後の2023年の2月に3回目のバズが訪れます。2023年7月現在、この動画は総再生数34万回、コメント数140件、高評価8800回と非常に盛況です。
2回目のバズが起きた2本目のASMR動画の特徴と分析
まずこの動画は、想像の10倍ほどの再生数を獲得し、たくさんのコメントが寄せられました。ASMR動画と、メインで上げていたオーディオ動画では視聴者に明確な違いがあります。ASMR動画の再生地域はアメリカが圧倒的に多く、次いで韓国やロシアなどで再生されています。また、視聴者の年齢層は18-24歳の若者が多く、76%が男性視聴者です。一方、オーディオ動画では再生国は主に日本で、視聴者の9割以上が45~65歳以上の男性です。見ている年齢層や地域、属性が全く違うのです。
さらに、ASMR動画を視聴した後の高評価してくる人の割合とチャンネル登録者数が驚くほど多く、この2本目のASMR動画によって多くの新しいチャンネル登録者を獲得しました。オーディオ動画をアップしても1年で、再生数の平均は1000回程度だったのに対して、今回のASMR動画では1万回は再生されます。
3本目のカジノASMR動画の投稿
2本目の動画を上げた後、しばらくの間再生数が芳しくなく、完全にタイミングを逃してしまったと後悔しつつ、その半年後の春に再生数が伸びたタイミングで3本目の制作に取りかかります。制作コストの低いASMRの動画作成ですが、動画作りに取りかかるにはそれなりの時間と労力、エネルギーが必要です。パワーを振り絞り今度こそ、バズりが起きている期間内に3本目を投稿しました。3回目では動画撮影はUHD 8bitで撮影し、照明もしっかりと焚いて、再生時間も30分まで長くし、やれる限りのことをしました。
しかしながら、バズ期間中にクオリティアップし、満を持して動画を上げたにもかかわらず、また、勢いがありません。ただ、地味に再生数は回り続け…、一応メインコンテンツであるオーディオ動画などと比べてると明らかに再生数は安定して多いです。
その後、4本目のバカラ動画と5本目6本目と調子よく上げていきますが、1年間での再生数は1万回程度にとどまっています。意外に渋いです。
カジノASMR動画の特性とYoutubeというSNSプラットフォーム
数回のプチバズが発生したカジノASMR動画ですが、再生数は大小あれど、どの動画も高評価してくれる人の割合が高く、コメントも沢山寄せられます。そしてそのコメントのほとんどは非常にポジティブな意見が多いです。逆にネガティブなコメントがほとんど見当たりません。オーディオ動画にあるようなマントや嫌み、悪口がほぼないのです。これには非常に驚きました。コメントの多くは、音が良い、動きが良い、手が綺麗などの動画を素直に評価してくれるものです。中には、主演しているトトロが可愛いとか、演者は女性???などといったコメントも寄せられています。
私は、もう15年以上もマジックを趣味として毎日トランプをいじって過ごしています。そのせいか、男女問わず手が綺麗だと言われます。これは日光に当たらないからとか、家事を行わないことが要因にあるかもしれませんが、オーディオ動画でもちょくちょく出てくるような段ボールを開けるときや重い物を持つときなどは、用途に合わせて手袋を使用してある程度気を遣って過ごしているからです。
また、ずっとマジックを趣味にしてきたため、カードさばきや動作の最適化、手の器用さにはかなりの自信があります。しかしながら、カジノのポーカーチップ裁きや、細かなルールに関してはほぼ素人です。実際のカジノでこれらのゲームをプレイしたこともなく、雰囲気でプレイしています。Youtubeなどで他人のプレイ動画やカジノスクールの動画を見て学ぶ努力はしていますが、まだまだ理解しきれていない部分は沢山あります。そんな完全ではないカジノASMRですが、批判するようなコメントがほぼ来ないことが衝撃でした。実際のカジノではチップ取り扱いの不備やカードシューターの指のかけ方など、危ないミスを犯しているかもしれませんが、カジノASMR動画では、音を聞き手の動きを楽しむことがメインであるため、ネガティブな意見も、ちょっと素人っぽさはあるねくらいのコメントしか来ません。そういったコメントの多くは普通にただのアドバイスなので次の動画では改善していく感じです。
さらに、コメントは英語だけでなく、韓国語、中国語おそらく台湾、スペイン語、最近は少ないですがロシア語も少し前までありました。外国語がメインなので意味を取りこぼしてしまうこともありますが、日本語コメントでも絶賛してくれる人が圧倒的に多いことには、これまで1人で練習してきたマジック人生が報われるようでした。
Youtubeは動画を上げるだけでなく、その動画を見てくれる人とのつながりを楽しむプラットフォームでもあります。このような交流を通じて、世界中の人々の温かさに触れることができたのは大きな価値があると思います。世界は自分が思っている以上に広く、心の優しい人々が多く存在していたのです。なぜこんなことを言うのかというと、私はオーディオ動画を上げると、ちょくちょくマウントや嫌み僻みなどが見られるため、オーディオ趣味に嫌気がさしていました。一方で、カジノASMRを楽しんでくれる人々は世界中にたくさんいて、彼らは本当に喜んでくれています。これはまさにWin-Winな状況だと思います。そういったコメントに心から感謝しています。世界は広く、多様性に富んでいます。私のちょっとした趣味が人々に楽しさや喜びを提供できることを知り、より広い視野をもって世界を見ることができたことに、心からの喜びを感じています。
オーディオルームというアドバンテージ
ASMR動画を撮るにあたって、オーディオルームが非常に重要な要素の一つです。まず、防音です。普通の部屋よりも外部の騒音が入りにくく、非常に静かです。部屋の吸音が十分に行われているため、無駄な反響音が一切なく、適当に録っても、音のSNが非常に高いです。オーディオは長らく趣味にしてきたため、オーディオインターフェースもマイクも元々はスピーカーの空気録音を行うために購入したものでしたが、ASMRの収録で大活躍しています。しかし、録音に関しては完全に素人であり、詳しい人が見たら改善が必要な部分はいくらでもあると思います。さらに、録音後の処理についても、コンプレッサーの設定など、発展途上の部分がまだまだあります。
それでも完成した動画は、オーディオルームのブーストで?、他の大手ASMR系YouTuberと比べても音質が良いと感じられます。コストがかかっていそうな海外のYouTuberの動画でも、オーディオルームの静寂さを実現している動画は少ないと感じます。オーディオルームを作っていたときに、この部屋がASMRで最も効果を発揮するとは思ってもいませんでしたが、ありがたいことです。総じて、オーディオルームの防音性能と調音によって、ASMR動画の品質が大きく向上していると感じています。
中国でもいつのまにか大人気に???
ここ数ヶ月、Youtubeの管理画面を開いていると、中国語のコメントが増えていることに気づきました。ある時、中国語で「何でこの動画はこんなに人気がないのですが、伝搬された動画が中国では大人気です」というようなコメントが届きました。これはもしかして…?と疑問に思い、中国版ニコニコ動画、bilibli動画に足を運んでみると、なんと私のカジノASMRが2週間で10万回以上再生されているではありませんか!もちろん、無断転載されているわけですが、これにはかなり驚きました。なによりも、bilibli動画なので、本家のYouTube動画よりもコメント数が格段に多く、中国語がわからない状態でも大盛り上がりしていることがわかります。ユーザーが2億人いるビリビリ動画では、日本のYouTubeで2年で34万回再生された動画が、わずか2週間で10万回再生を超え、コメントも300件以上に上っています。
動画は無断転載ではありますが、私が1から作ったオリジナル動画をここまで評価してくれる人々が沢山いることに驚きです。初期のニコニコ動画やYouTubeでも違法アップロードや無断転載がある意味でメインコンテンツとして存在していましたが、まあ多少はね……。という気持ちで、中国で転載されてバズっている動画を見ているのでした。
これまで15年にわたるネット活動の中で、これほど大きなチャンスを感じたことはありません。過去にはブログ記事が海外フォーラムで話題になったこともありましたが、元の記事が、完全に自分のオリジナルコンテンツとは言えませんでしたし、そして勢いもあまりありませんでした。しかし、今回は異なります。中国での動画投稿も視野に入れつつ、この状況をうまく利用する方法を模索しています。
2億人のユーザーを抱えるBilibili動画での10万回再生は少ないように感じるかもしれませんが、他のASMR動画を見ると1000回以内で収まっているものがほとんどです。まれに1万回程度に達するものもありますが、10万回以上再生されている動画は稀です。他のASMR系YouTuberの動画も多く転載されていますが、有名ASMR専門チャンネルや可愛い女の子がサムネイルに使われる中で、私がただブラックジャックをプレイしている動画が受けているのは、逆に異質に感じます。そう、爆発的な再生数の源としてのネームバリューや若い女の子の力が働いていないのです。これはぱっと見でバズっているのではなく、単純に動画が高く評価されて拡散しているということです。この点は非常に注目すべき要素だと思います。
これからのカジノASMRの展望と展開
現状、私のYoutubeチャンネルのメインコンテンツはオーディオや建築、家に焦点を当てているため、メインコンテンツをカジノASMRに切り替わることはそうそう容易いことではありません。しかし、オーディオ動画だけを上げ続けていっても成長は限られるのではないかと感じています。カジノASMR動画のコスパは非常に高く、制作にかかる労力が小さいです。撮影は椅子に座ってロールプレイするだけで、音の調整と簡単なカット編集、色調整で1日以内に完了します。撮ってほぼそのままアップロードできるので、20分のASMR動画なら3時間で完成します。
このカジノASMR動画制作の利点は大きいですが、欠点としては、常にステレオマイクを設置しておく必要があること、手のコンディションを整える必要があります。この手のコンディションですが、腱鞘炎問題が現在最も大きな懸念事項となっています。マジックの練習のしすぎで、手の腱が一部外れてしまっているので外科手術を行う必要があります。
もう一つ重要になってくるのがYoutubeのチャンネルイメージの変更をどのように行うかです。現在の登録者の割合は、カジノASMRが50%、オーディオ趣味が35%、家が15%程度だと思われます。登録者はまだ7000人ですが、過去の再生数が伸びていないオーディオ動画や建築動画の除去も検討しつつ、Youtubeコンサルが欲しいです。ここは非常に慎重かつ戦略的な決断が求められます。
まとめ
なんとなく作ったカジノASMR動画が予想以上の反響がありました。動画に季節性があるらしく1年に一度は定期的に小さくバズっており、続編をせっせと作っていますがなぜか再生数は思ったほど爆発的には伸びていません。それでも動画に寄せられる反応はとても良い感じで、世界の広さと人の温かさを感じます。ASMR動画は、15年にわたってトランプをいじっているのが趣味であったことと、オーディオルームのアドバンテージ、近年のポーカーブームが奇跡的に融合し発現した作品です。また制作にかかる労力が他の動画より小さく割と簡単に作れる非常にコスパの良いです。そんな動画が中国のbilibli動画に転載されてそこでもバズってることに気がつきました。自分のオリジナルコンテンツがこれほどまでに世界に評価されたことは初めてで驚きです。
このビッグチャンス到来に、Youtubeのチャンネル運営において非常に難しい判断を迫られていると感じます。さてうまくいくでしょうか?
カジノASMR動画を通じて、世界に評価される、自分の才能が発見されたというお話でした。自分にって当たり前であり簡単にできるトランプ遊びと動画作りが世界に人に喜んでもらえるコンテンツに。これは才能以外の何物でもないでしょう。
おわり。