明日などないかもしれないのに
どうして 今日を過ごしてしまう
今がすべてと
そう思って生きてみるの
岡崎律子 / I’m always close to you
For RITZ
この頃のハイエンドオーディオは恐ろしく高い。
しかしその価値を十分に知ろうとする者はあまり多くない。
その中の身近な一人として、家族の存在があると思う。
ハードオフやリサイクルショップへ貴重なハイエンドオーディオがまとまって出されると
オーナーが亡くなりその家族がよく分からないままにリサイクルショップへ売ってしまったのだと勘ぐってしまう。
しかしながらオーディオを問わず、そんなことが現代日本社会ではよく見る光景になってしまった。
ある日のこと。F社へ遊びに行くときれいなパラゴンが置いてあった。
社長へ話を伺うと、主人が亡くなって妻がF社へ売りに出したという。
詳しい経緯は聴かなかったけれど、生前にご主人が大切にしていた宝物だったそうで
亡くなってから1年が経ち、うちに必要がないとオーディオ専門店へとそのパラゴンを託したという。
「オーディオ知らない人には価値も音も分からないですからね…」と社長は言う。
その後、そのパラゴンがどうなったかは知る余地もないけれど、オーディオ専門店だからまたオーディオ好きの誰かの元へと旅だったのだろう。
しかしながら、パラゴンともある稀少なビンテージオーディオでさえも、オーディオ専門店ではなく、ハードオフやヤフオクのリサイクルショップでの目撃事例は後を絶たない。
オーディオというのはその深さや非日常性から価値の理解に苦しむようなものが多い、加えてとても大きくて歪で重くて…もはやそれが何をする機械なのか分からないことさえあるだろう。
長年オーディオを嗜んだマニアの部屋にはハイエンドケーブルやビンテージ真空管など素人目には価値があるのかすら分からない物に溢れていると思う。
しかしながら、オーディオという趣味の性質上、家族と趣味の話をシェアすることはあまりないように思う。ピュアオーディオに至っては値段が値段だけに言い出しづらい所も手伝って持っている本人しか知らないオーディオが家に数多く眠っているかも知れない。
しかしそんな状態では、いつ死ぬかなんて誰もわからないこの世で、身の回りに自分にしか価値の分からない物で部屋が溢れかえっていたら、後々どうなってしまうかは想像に容易いだろう。
大金をつぎ込み、大事にしてきたオーディオが、適当なリサイクルショップへ売られ、最悪捨てられることも考えられる。
そこで、主要なオーディオ機器にオーディオショウのブースみたいにプライスタグをつけることにしてみた。
オーディオショウの写真をいくつも見て、企業毎にどんなタグが置かれているかチェックしてみた。
いろいろとみていくと、特注と思われるアクリルのカード立ての豪華なものや手作り感満載のタグなどメーカーの数だけの個性があった。
普段あまり気に留めないが、オーディオショウの前では代理店やメーカーの中の人がちまちまとタグのチェックなどもやっているのだろうと思うと、なんだかオーディオショウが身近に感じられた。
とりあえず、太陽インターナショナルさんのところのレイアウトを参考に大まかな恒例をつくった。
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今年の新潟オーディオショウの太陽インターナショナルブース。VIVALDI ONE。 |
Google先生でメーカーと代理店のロゴを出来るだけ高解像度のものを探して保存していった。
これだけでもかなり骨が折れる作業だった。
ロゴが一通り揃ったらPhotoshopでちまちま作っていく。
名刺用の印刷紙に印刷したら簡単かと思ったけれど、今回はPhotoshopで一つずつつくってコンタクトシートを作成してそのままケント紙に印刷した。
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ケント紙に印刷した。 |
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裁断機で丁寧に切っていく。 |
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ここまで3時間ほどかかった。
完成したただの紙を見ていると案外多彩なオーディオ製品群になんだかとてもテンションが上がった。 |
問題はこれを立て掛けるカード立てだ。
それっぽい材料を探して100円ショップのセリアへ行ったがどうにも満足行く物が見つからなかった。
ヨドバシカメラの値札やスーパーやコンビニのポップを参考にいろいろと考えてみたが
名刺立てのような物に立てるのがもっとも低コストで見た目が良いように思えた。
Amazonで探していくと、「名刺立て」「カード立て」「カードスタンド」と検索すると良い感じのものが見つかった。
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Amazonで買った木片カード立て |
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30*20*10 スリット90度 |
非常にシンプルな商品で自作も容易だとは思ったけれどここは時短を選んで課金した。
事前に作っておいたカードを立てると非常にそれっぽくなった。
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G3 GIYAのポップ。450万円のプライスが自分でも暴力的に思える。 |
カードのレイアウトとしては、機材の名前を前面にだした。
価格は桁数が多いので少し小さめでがその代わりに色を赤にして主張をだした。
それとアクセサリーやプレイヤーなどの役割も小さく書いた。
型番と、メーカー名、以外にも代理店の名前を入れたのは、調べるときに真っ先に代理店のページを見てもらったら最新の価格や説明が最もわかりやすく書いてあると思ったので。
こうして値札をつけてて見ると、普段感じない「高いオーディオを持っている感」が強く感じられる。
というより改めてオーディオ機器が高すぎだ!と強く感じた。 先日、ISOTEKのSIGMASを導入したけれど、見た目があまり変わらないことに加えて、ラックの最上段に怪しすぎるクロック機器を載せていたために、家族にISOTEKを買い換えたことを全く気づかれることはなかった。これがミスディレクションと呼んでいいのかわからないが、アキュフェーズ愛好家の気持ちが3mmくらい分かった気がする。
しかし、人にとってよくわからないものというのは結構ストレスなようで、SIGMASの価格が分かった瞬間3日ほど(お察しください)したのは内緒だ。 裏技としては、しばらくポップを運用してここぞという所で嘘を書いておくと本当に信じ込むと思う。(いやそんなことしようとしていたわけではないのだけど思いついた。)
しかしこうやってポップタグをいちいち作っていたら機材の変更や追加が億劫になるかも知れない。いや逆にポップ作らなくなるのが普通だとは思うが。
加えてオーディオ界では価格改定が非常に多いので…代理店も移り変わったら…ハイエンド機は結構大変かも知れない。
大変なのだけど、こんな些細なくだらないことでオーディオへの理解を深めるきっかけが出来たら良いなと感じる。
このポップ作成はあまりに大げさではあるけれど、あるときから、DVDや本やトランプも買った日時と購入した店そして値段をマーカーで書いたマスキングテープか付箋紙を貼るようになった。細々とした物はチャック付きのビニール袋にいれてそこに情報をかき込む。
何にしてもコレクションを自分自身もしっかりと把握しておくことが重要に思う。
少しで良いからその内容を家族も知っていたらいいかなとそんな記事でした。真似する人いるのかな?やりたいと思った人はこっそり教えくださいね。
おわり