トランプ製造最大手のUSPC社の工場が移転してからもう10年ほどが経とうとしていますが、バイスクルの品質はずっと落ちたままです。
台湾製のトランプの出現やバイスクルに変わる新しいブランドの確立を目指す動きが盛んになり、マジック業界ではデックの質を上げる努力をしてきました。

マジシャンの中ではKY製”STANDARD”バイスクルとして区別されています。というのも、工場が移転するまでのOHIO製バイスクルとKY製では紙の質に大きな違いがあります。

その一つに、リサイクルペーパーの存在が大きいと言われており、この環境問題に配慮したことにより、USPC社のトランプの質はタリホーやビーにいたっても全てのブランドで主に耐久性が落ちています。

自分は2005年あたりからマジックを始めましたが、その時に1グロスつまり12ダースのバイスクルを買い、8年ほどそれを使っていました。あるときKY製バイスクルになり、現行品の質が著しく落ちていることを知り、5ダース残っているバイスクルの希少性に気づいてから仕方なく質の悪いSTANDARDバイスクルを使い続けていました。
→スタンダードデック「KY製バイスクル」(※以前書いた記事です)

一昨年には、旧箱使用のKYバイスクルを1グロス買いました。
→バイスクル12ダース買う。 まとめ買いするならコストコよりマツイゲーミングマシンで買うのがおすすめ?

そのSTANDARDですがOHIO製の”ライダーバック”と比べると、

  • 箱に要らない広告やマークが追加されて使いづらくなっている
  • 裁断がとにかく荒くハズレのデックでは使い物にならない
  • 紙の耐久性がなくすぐにフニャフニャになる
  • 裁断が荒いせいか縁から糊がしみ出して表面に付着し滑りがあっという間に悪くなる
  • 品質がとにかく安定しない。年ごとに当たり年ハズレ年があったりする。

とまあ、お客さんの前でデックを開封したり、とても精密な技法を要するマジックをやりたいマジシャンにとっては不満しかありません。
それでもUSPC社はマジシャンのためにはトランプを作らないと宣言しています。

OHIOの時は1デックで2~3週間持っていところKYバイスクルになると数日でだめになることが多く、技法の練習がとにかく捗りません。品質が安定しないので、デック毎に反りがまちまちで裁断も酷ものが多く、滑りもすぐに落ちてしまいます。
使っているもののせいにするのはあまり気は進みませんが、ヘインシュタインの練習なんてしているとあっという間に使えなくなるし、ボトムディールの練習をすれば、滑りが悪くなってカードが引っかかり瞬く間に技法として成立しなくなってきます。

それでもKY製STANDARDバイスクルは入手性がよく値段も安いのでプロが現場で使い捨てにしたり、フィジェットトイ感覚で手遊びするくらいには使えます。もちろんトランプ遊びにも。

5年で、1グロスほどKYバイスクルを使ってみましたが、酷い!酷いとしか言いようがありません。売り物かと思うほど裁断面がボロボロのロットに当たったときにはそのまま捨てようと思うほどイラッときます。
そして裁断が荒い奴に限って糊が露出しやすいのか滑りが瞬く間に悪くなるのです。

なにより、触っていて心地よさをあまり感じません。
自分はプロではないのでトランプマジックを披露する機会はあまりありませんが、トランプを触らない日はないと言うくらい毎日なにかしら練習に勤しんでいます。
生活の一部にもなっているバイスクル…なのに品質は最低。

そんな中、一つの救世主的存在が現れました。
それが、

バイスクル ゴールドスタンダード by Richard Turner

リチャードターナーが監修した、beeの紙とクォリティで作られたスペシャルバイスクルです。
製造年はほぼ全て2008年のKから始まるロットのようです。
2008年と言うことはUSPC社のOHIO末期です。一口にOHIOと言っても100年以上の歴史があり何回にも及ぶマイナーチェンジがなされており、年代毎にその質感やインクの色など細部を見ていくとその違いは多岐にわたります。
OHIO末期のバイスクルは実のところ最高というわけではなく中程度と言われています。しかしSTANDARDバイスクルと比べるとその質は比べられないほどに高く感じられます。

OHIO製の再生紙を使っていないカジノクォリティであるbeeの紙を使ったバイスクルですから、耐久性や質の安定感は抜群です。
どの箱を開けても一定の高い品質でトランプが提供されます。
箱も、ライダーバック仕様のバイスクルの箱でありマジシャン目線では完璧です。

マジシャンの中では最強のトランプではありますが、裏面にゴールドのシールが貼られていたり、OHIO特有の印刷のズレが激しかったり、フィルムが激ユルで簡単に裂けたり外れやすくなっています。このあたりは旧工場故の仕方ないところが多いです。
加えて、紙がバイスクルではなくbeeなので若干硬めではあります。これは慣れればたいした問題ではありませんが、カットの向きがトラディショナルカットが用いられておりファローの向きが通常と逆です。

また最も懸念すべきは、このバイスクルゴールドスタンダードは、超大量に生産されている様子ではありますが、そのうち在庫切れになるのが目に見えていることです。リチャードターナーは一体このゴールドスタンダードをいくつオーダーしたのか噂にも聞きませんが、彼が使うおそらく一生分以上は刷ったものと思われます。USPC社の最小ロットはたしか5000個だったはずですが、自分の推測では10万個は流通している感じがしています。

そんなので、とりあえずストリートマジシャンで6ダース(ハーフグロス)ゴールドスタンダード買いました。

ゴールドスタンダードは持ちが良いのでハーフグロスでもおそらく3年は持つと思います。さらにSTANDARDも併用しながら大切に使っていったら5年は余裕で使える気がします。

いまマジック業界を見渡すと、分かっているマジシャンとくにカーディシャンはこのゴールドスタンダードを愛用している方が多いようです。
ゴールドのシールを目にしたら間違いなくゴルスタです。

日本のマジックショップでは大方一個600円程度で販売されていますが、現行のbeeが日本では600円以上することを考えると逆にお買い得とも取れます。
スプリングやプレッシャーファンなどの紙の繊維が切れるような技法を控えたり、頻繁に水がかかるような場所や湿度が異様に高い場所などで使わなければ本当にかなり持つので、ここぞという時用にもゴールドスタンダードを1ダースほど常備しておくと安心かも知れません。ただ、現在のスタンダードバイスクルとは質がかなり違うのであらかじめ触り倒して慣れておく必要があります。

余裕があれば海外のマジックショップで大量に仕入れておくのも悪くないと思います。
最近カードマジックを始めた方にはあまり馴染みがないようですが、ある程度長くマジックに馴染みがある愛好家やプロではOHIO製トランプが重宝されるのです。

現在流通しているゴールドスタンダードが完全に売り切れたらどうするかはまたマジシャンの大きな課題のようです。
とりあえず自分の場合は練習用にbeeを使うかなと思います。

ゴールドスタンダード、完全になくなってしまう前に一個600円で確保しておいて方が良いというお話でした。

BICYCLE(バイスクル) ライダーバック STANDARD トランプ 12個パック(青6個/赤6個))