去年から今年にかけてゴルスタことゴールドスタンダードを買い集めていました。そして半年ほどゴルスタを実際に日常的に使ってみて分かったこと、そしてOHIO製バイシクルとKYバイシクルの圧倒的な違いを数値として出すことに成功しましたのでここに公表したいと思います。
その前にまず簡単な自己紹介。
マジック歴13年くらい、コインとカードは半々。近年肩と手を壊してからは指に負担がかかりすぎるコインよりカードを弄っていることが多い。
アニメ見ながらどこかへ外出するときなど、概ねカードを弄りながら生活する。
とりあえずコインかカード触っていると頭が冴えるし落ち着くようになる。
基本的にマジックはジコマンの趣味。見せることよりも技法練習の方がメインかもしれない。
バイシクルゴールドスタンダードとは?
世界最大のトランプメーカーUSPC社のOHIO時代にリチャードターナーがBeeの紙でバイスクルを作らせた特別なデック。
正真正銘のOHIO製でありBeeの紙が使われているために独特の使い心地と信じられないほどの耐久性があるのが特徴。また裁断の向きを現代とは逆にしたトラディショナルカットが用いられている。※現在では一般的なバイシクルもトラディショナルカットに戻っています。
USPC社がKYに移転した際に紙を再生紙にしたことでバイシクルの品質が落ちてしまいマジシャンの間でとても重宝されるデックとなる。
マジックショップなどでは、リチャードターナーが特注した本当に特別なバイシクルだと説明されているけれど、個人的にゴルスタとは、リチャードターナーがマジック界に残すであろう最大の遺産だと思っています。ターナー氏については様々な逸話があるけれどこれほどまでに多くのマジシャンに影響を与えたマジシャンもある意味いないかも知れない。?
■バイシクルゴールドスタンダードの基本品質
巷で、とにかく質が良く持ちが良いとずっと話題のゴルスタですが、実際に常用デックとして使ってみるとそのすごさが身にしみて分かります。
OHIO末期のバイシクルよりもやや硬めでハリがあるもののしなやかで手の負担が少なく曲げたときの戻りが良いので様々な技法が楽にできるようになります。
しばらくゴルスタを使っていると現在のKY製バイシクルがあまりにエッジがガサガサですぐ滑りが悪く指に負担がかかる固さなのか実感できます。
ゴルスタは一度使い終わったと感じるところまで使い込んでもケースに入れて1週間ほど寝かせるとまた復活します。思いっきり手汗を付けたりしない限りは滑りが常に均一で柔らかさは徐々にコシがなくなっていくだけで緩急激な劣化はまず起きません。エッジが慣れると表からも裏からもファローは入りやすくなります。ふにゃふにゃになるまで使い込んでもカードのエッジが揃っており非常の強固な紙質。
逆に言うとゴルスタをずっと使っているととにかくKY製バイシクルが使えなくなってしまうのが最大の欠点。KY製はディーリングポジションで持っているだけでストレスを感じるほど。
■ゴルスタの欠点
1.裁断
裁断はUSPCのそれなので台湾製のようなシャープなエッジではない。しかししばらく馴らすと滑らかになるので慣れの問題が大きいかも知れない。
2.フィルム
ゴルスタのフィルムはとても緩い。フィルムが緩いのは90~00年代OHIO特有のものだけれど、ゴルスタはあらゆるデックの中で一番緩いと感じるくらいに緩い。
短期間に超大量に生産したせいなのかフィルムの熱着が甘く、シワが寄っていたり、そもそも閉じられていない個体がある。フィルムを使ったマジックでは出来ない物がある。
フィルムがしっかりと巻かれていないために湿度が高い場所での保存は危険だと思われる
3.特性シールと封印シール
ゴルスタ仕様の金色の封印シールでボックスのギミックは使いづらい。また、裏に丸い金色のシールが貼ってあるためケースの裏を使ったマジックはちょっと気を使う場面がある。
4.印刷ずれ
OHIOのUSPCは印刷ずれが激しい。現在でもずれているデックを見かけるけれど、これ絶対検品で弾かれるレベルのものが1~2ダースに一個程度存在する。
多少のずれは気にならない人じゃないとストレスかもしれない。特に台湾製に慣れている人ならかなり気になると思う。しかしOHIO時代からカードマジックをやっているならこれが普通と思うかも知れない。きれい事を言えば、ずれていることがOHIO製の証。
5.生産完了している
この記事を読んでいる人なら誰しもが知っていると思うけれど、数こそ大量に作ってはいるがある種の限定生産でありいつか手に入らなくなることは確実。
逆にゴルスタ以上のデックが登場する可能性も十分にあるため買い溜めはかなり勇気が要る。
調査で分かったゴールドスタンダードとOHIOの耐久性
KY製バイシクルは耐久性が堕ちに落ちていて触っているとすぐ滑りが悪くなってコシが無くなると多くのマジシャンが口を揃えて言いますがさて実際にどの程度質が落ちたのでしょうか?
このOHIOとKYの質の差を数値として出す為にそれぞれのデックの使用日数を19ダースのトランプに対して行いました。
KYバイシクルの耐久性
うちにあるのは、コストコで売っていたいわゆるSTANDARDバイシクルとマツイゲーミングマシンで買ったライダーバックの箱に入ったKYのバイシクル。
1つめのコストコバイシクルは2013~2014年製
2つめのマツイゲーミングマシンのバイシクルは2016年製
全てのデックには使用開始日と使用終了日が書いてあるのでそれを調べて1個あたりの耐久日数を調べました。
マツイゲーミングマシンから買ったバイシクル。2016年製、ちょうど6ダース
KYバイシクルの耐用日数
2016年 KY マツイゲーミングマシン正規輸入バイシクル (72個を調査)
→10.0日/1デック
2013年2014年 KY コストコ直輸入バイシクル (84個を調査)
→10.0日/1デック
使っている年が違うのに1デック辺りの使用日数が一致する奇跡。
OHIOバイシクルの耐久日数
同じようにOHIO製の2007年製バイシクルについても5ダースを調査した。
ゴルスタについては1ダースを調査した、
2007年 OHIO 末期 バイシクルライダーバック (60個を調査)
→21.5日/1デック
Beeストック OHIO バイシクルゴールドスタンダード (12個を調査)
→21.8日/1デック
わずかに差があるものの同じOHIO製バイシクルではだいたい同じ日数使えることが分かった。
OHIOとKYの差をまとめると
KY製バイシクルの平均耐久日数は10日であるのにたいして、
OHIO製バイシクル(ゴルスタ)は平均で21.6日となった。
この結果を見て、KY製バイシクルはOHIO製に対して耐久性がキッパリ半分以下になったことが分かった。
また使用感としてはOHIO製がずっと安定しているのに対して、KY製は使い始めからエッジがボロボロだったり急激に滑りが悪くなったりとストレスが多く無理に長めに使っている事も多かったように思う。
加えて、使用済みの状態で何年も経過したデックをあけて見ると、どちらも汗によって塊になっていたけれど、KYとOHIOでは滑りに大きな差がありやはりOHIO製では使用済みであっても滑りがよくまだ使えそうな個体がいくつも見られた。
福祉施設など寄附したら十分に喜ばれそうな質を保っていた。
しかし、引っ越しのために全てのトランプは処分したことをここで報告しておきたい。
OHIOとKYの質 最後に
マジシャンによって、使用環境や頻度、なにより手汗の状況など様々であるけれど、同一環境下における比較ができたと思う。
基本的にはOHIO製はKY製の2倍持つ!と高々に宣言したい。
もちろんKY製の中でも質が改善されたり、当たりロットだったりすると持ちは10日以上になるように思う。現在のUSPCのバイシクルでは質が改善していると言うしこれもまた調査したら面白い結果が出てくると思われる。
ゴルスタは、使っていて非常に気持ちの良いトランプなので、カーディシャンなら1ダースは持っておいて損は無い。いや持っておくべきだと思う。
2019年9月10日現在、ペンギンマジックを見たところ3.85ドルで売られていたゴルスタが5ドルに値上げされていた。一時的なものなのかまだ値段があるのかはわからないけれど、これからどんどんゴルスタの入手が困難になることを考えると5ドルはまだ買いだと思うし、国内ショップでは500円で普通に売っている店もあるので見かけたら1ダース買っておくことをオススメしたい。
自分はあまりに気に入ってしまったのでとりあえず44ダースストックしてしまった。1ダースは使用済みでさらに1ダースは荷崩れで破損。これだけあれば20年は持ってくれるだろう。w
もしゴルスタがなくなってしまってもbeeでなんとか乗り切りたいと思う。
今年、USPC社がカルタムンディに買収されたことが大きなニュースになったけれど、これからバイシクルの質がどうなるのかは誰にも分からない。最近KYの質はかなり改善していると聴くが、まだその実物を触っていないことはここにちゃんと記しておきたい。また2019年バイシクルを手にしたらまた記事にしようと思う。
なんにしても、ゴルスタの質はやはり素晴らしいことが分かったしまだ普通のマジックショップ手に入るので今のうちにストックを作っておきたい。
最後に、ありがとうリチャードターナー。
※この記事は動画を作成する予定です。しばしお待ちください。
※追記しました。
BEE(ビー) 92 ダイヤモンドバック トランプ 赤/青 ポーカーサイズ 2デックシュリンクパック
売り上げランキング: 8,528