kickstarterでのクラウドファンディングにて先行販売された、インポッシブルカンパニーのポッシブルデックが先月ようやく普通に買えるようになったのでとりあえず赤青1つずつ買ってみました。
これまで台湾製デックは、プレイフェアの初代と2、エンパイアキーパー初期、アルスバック、FISMアジア2017(通称ぎふぎふ)、NORTHTAL NORTHFELL water color edition、NOC V3などを使ってきました。
ポッシブルデックでは、安さ以上に紙質に非常に拘ったと言うことで、非常に期待を寄せているマニアは多いのではないでしょうか。なによりインポッシブルカンパニー製作のデックですからなおのことです。

インポッシブルカンパニー ポッシブルデック 公式HP

プレイフェアの和泉さんによるポッシブルデックのレビューです。
トランプ販売業者による鋭い視点と分析です。

ポッシブルデックとインポッシブルデック

ポッシブルデックの良い点
1.安い

ポッシブルデックを語る上では、このコスパは外せません。間違いなく全デックの中でも上位です。
消耗品であるデックは安いに越したことはありません。
しかし安くしすぎたためか、他の販売店での取り扱いが出来ず限定販売のようになっています。
普及させる為の戦略として、採算ギリギリの価格設定をとったような感じですがそれが逆に普及を妨げているような気がします。デックは結構マジックショップでついでにいくつか買っている人が多いのではないかと思うのです。それでもこの安さは正義です。

2.カッティングの正確さ

台湾製特有の滑らかなエッジです。ファローも滑らかですし、触った感じもすべすべで気持ちいいです。また鋭くカットされてはいますが、紙質は柔らかめなので手に刺さる感じはしません。USPC社ではよくある、紙のカスが箱に混入しているようなこともないようで品質管理はもうすでに台湾製の方が上に感じます。

3.印刷ズレがない

こちらは、カッティングと同じになりますが、USPC社では当たり前の印刷のずれがほとんどありません。ないと言っても良いでしょう。ボーダーはかなり細いですが印刷ずれがないので自然です。フェイスを表にスプレッドした感じ上下にも左右にもブレがなく非常に美しい見ためです。

4.フェイスはバイシクルと同じ

フェイスは変にカスタムされることなく、通常のバイシクルと全く同じデザインと配色です。普段使いのデックとして使い慣れたいつものフェイスというのは非常に大事です。ただしジョーカーだけは、インデックスに「JOKER」とアルファベットで書かれ、インポッシブルのロゴにも使われているペンローズの三角形がワンポイントであしらってあります。ジョーカーに関しては上下がありますが、2枚デュプリケートで色も全く同じでマジシャン目線の作りです。

5.紙質が良い

ポッシブルデックを触ってみてまず感じたのは、柔らかい事です。感覚的には、バイシクルにぎふぎふデックのあの弾力感を少し加えた感じです。ぎふぎふに使われた紙はあまりにもふにゃふにゃ過ぎましたが、ポッシブルデックは、バイシクルのちょうど使い慣れて馴染んだ感じの固さです。リフルもスプリングもやりやすく復元力も十分にあると感じます。
また柔らかく程よい弾力性でパームしたときの手の馴染み具合がかなり良いです。ワンハンドパームなんかが非常にしやすいです。パリッとしたハリよりも芯のあるシリコンゴムのような柔軟性のある紙です。

6.滑り具合がちょうど良い

台湾製特有のぬるぬるした感じの滑りですが、タリホーを使い込んでベビーパウダーを馴染ませた感じに近いです。とにかく滑りすぎないので色々な技法で都合が良いと思います。エンボスのかかり具合は浅めで密な感じがします。均等に広がるので細い縁と相まって綺麗に見えます。

ポッシブルデックの悪い点と気になったところ

1.インポッシブルカンパニーでしか買えない

自社販売しかしていないこのデックを買うのは基本はデックマニアじゃないかなと思います。
広くマジシャンに使って貰うとなるとやはり、一社での販売はちょっときついのではないかなと思います。
基本料金をkickstarterの価格はそのままに、その後一個340円にしてダース買いしたら一個320円、グロス買いで300円みたいな価格設定の方がありがたいしお得感があったのかなと思います。

2.マジシャンブランドのトランプ

カードマジックをしていると、基本バイシクルを使っているためにそのトランプ何?と訊かれることは多いと思います。そうなったときに、マジシャンブランドのマジシャンが作ったトランプだよというのはどうなのと思います。そこは、USPC社ならカジノで使われている紙製トランプだと言えるので割と納得して貰えます。加えて、バックにImpossibleと社名とロゴが入ってしまっているので、プロは使いにくいと思います。アマチュアでもこれを嫌う人は一定数いるのかなと思います。

4.インクの発色と紙の色

これはある程度好みの問題だですが、ポッシブルデックは蛍光塗料を使っているが如く非常に白く、インクの発色は非常に良いです。しかしマジシャンの道具として使うには赤がすこし煩すぎる感じがします。印刷自体はとてもシャープに見えますし、ダイヤやハートの赤がかなり鮮やかですが、彩度明度が高すぎて逆に薄く見え安っぽく感じます。加えて、箱とバックのデザインが一色なのでどこかレゴのようなおもちゃ感がでてしまっていて、はやり高級感は感じにくい配色かなと思います。

中央のポッシブルデックだけ異様に白い。蛍光材が入っていると思われる

5.匂いが気になる

このデック、台湾製独特の匂いがします。エンパイアキーパーとアルスバックに近い感じの匂いですが、それよりも化学薬品臭がきついです。普通に弄っていると、いつの間にか頭が痛くなってしまいました。トランプで頭痛が発生したのは、中国製のジュリーズナゲット復刻版から2例目です。過敏体質でなければ気にならないかも知れませんが、食事中にとかちょっと気分が悪いときに使いたいとは思えません。
エンパイアキーパーはホワイトガソリンの様な香りですが、ポッシブルデックはそこにもっと薬品を付き化したような刺激臭がします。エンジンオイルやガソリンといった感じで、USPC社のバイシクルの、紙とうっすら接着剤の香りからすると匂いは強いです。ずっと手に持っていると手にも匂いが多少ついてしまうのでこれはちょっと常用するのは難しいかなと思います。ただ、この薬品臭ですが、開封から3年経ったエンパイアキーパーからはほぼ消えていたので、数日間干せば何とかなるかも知れません。

気になった点をいくつか

気になる薄さですが、OHIO末期のバイシクルライダーバックとほぼ同じ厚みでした。バイシクルエリートエディションとほぼ同じか薄いです。薄いですがUSPC製と違い、リサイクルペーパーを使っていないので耐久力は値段以上にはあるように思います。匂いのせいでしっかり検証できていませんが、手汗や反りの復元力は高めだと思います。
総評すると、匂いが受け入れられるレベルで、インポッシブルカンパニーが好きなら普通に良いデックだと思います。このクオリティで300円を切ったのはやり過ぎかも知れないと思うほどにです。
まだ出始めなので、ギミックデックだったりギャフデックがないことがすこし心残りですが、バックのデザインの性質からマークドデックを作るのは至難の業です。NOCのアレを採用すれば出来そうですが、あのマーキングシステムは実用レベルではありません。

ロットによって質がかなり違うUSPC社製よりも、近年安定してきている台湾製に今後も期待大です。
台湾製デックはまだ匂いの問題を抱えていますが、今の中国の勢いを見ているとこの程度のことはすぐにクリアしてきそうです。

初めての台湾製のデックはプレイフェア初代とNOCだったために、あの硬すぎる紙質となにか薬品が手につく感じのべたべた感で、台湾製は一切無いと思っていた頃から早6年余り、USPC社がいつの間にかカルタムンディに買われ、マジック用トランプに台湾製を使うことが当たり前になる日はかなり近いのではないかと感じます。

ただ、同社で販売されているインポッシブルデックは、USPC社製でbeeの紙が使われてさらにダブルバックとブランクフェイス、オリジナル解説DLムービーがついて550円です。こっちもぶっちゃけかなりの破格だと思います。普通のBeeでも一個600円以上しますから、デック販売でちゃんと利益が出ているのかちょっと心配になるレベルです。
ポッシブルデックが気になるけど他に買いたいデックがないなら、
インポッシブルデック
コパック310スリムライン
バンブルビー(OHIOでほぼゴルスタ同品質)
タリホーファンバック(KY、OHIOもあり)
アビエイター
あたりを同時に買うのがオススメです。

これ地味に気になっている人多い気がしますが、「ポッシブルデック」と「インポッシブルデック」は全くの別物です。しかしこの二つ名前が似すぎていて判別がたまに難しいです。ポッシブルデックの方は808のようなもう少し気の利いた名前か愛称が必要に思います。良い愛称やネーミングはヒット商品にとって非常に重要な要素です。

バイシクルゴールドスタンダードとの比較

おわりに

ゴルスタ最強を唱えたいところですが、あと数年でひっくり返りそうな気がしています。
ただし、好みの問題や使い慣れたバイシクル柄がやっぱり落ち着くということで今後もゴルスタを使用していくとは思います。なにより一定品質を超えたらあとはできるだけ同じロット品質で練習し続けると技法の練習効率はかなり上がるのではないかなと思います。
シュプリームエディションやバイシクルのエキスパートエディションのようなクラッシュドストックなどの薄い紙が使われたデックは使い心地はいいですが、ゴルスタに戻ると感覚がすこし狂います。あとコストが高いです。
私の中では、現状では恐らくゴルスタが今最も質が良いトランプだと思っているので、とりあえずはこれを使い続けてはいきますが、もう一生分買ってしまったからにはこれ以外の選択肢がなくなってしまったのでした。