季節は冬へと移り変わり大荒れだった今週末。
日曜日になったとたん青空さえも見えるオーディオ日和。
月曜日に試聴をお願いしていたその日天に迎えられるようにまたF社へ向かった。

ちょうど先週の日曜日あの802DiamondがまたF社へ中古が入荷され
前回上海へ行ってしまったうちの802SD。今度こそはとメールを送った。
その3日後にはなぜか商談中の札が下がっていた。どやらまた間に合わなかったのだろうとおもうっていると木曜日にはアキュフェーズのアンプも借りられましたとのメールが返ってきた。

スピーカー B&W 802Diamond
プレイヤーエソテリック
アンプ アキュフェーズ

のセットでデモをお願いしたのだけど、アキュフェーズはちょうど店に展示品が無かったのにもかかわらずアキュフェーズにてデモ品が用意でき、
すぐさま商談中になってしまった802SDも日曜日までは聴けるという。

聴けるのは日曜日だけでこのタイミングを逃したら試聴できませんでしたので運命かも知れませんとIさん。

今回F社へお伺いしたのはタイトル通り、以前強く薦められたトリノフオーディオのST2を体験するためだ。
トリノフの補正技術を確かめるには、自宅での試聴が最も良いとのことではあるが
実のところ欲しいのはプリアンプ付きのアメジストであるのだけど、
このアメジストのデモ機がなかなか空きがなくいまだに借りられずにいる。

そこで802SDが中古ででた今でなら最も音をよく知るスピーカーでデモしたら分かるのでは無いかと、そしてまたもう一度802Diamondの音を聞いて今のシステムと比較したいそんな思いもあった。

今回の試聴に用意したCD。20枚くらい。

 

 

 

 

■今回試聴したシステム
スピーカー:B&W 802Diamond PB
プレイヤー:ESOTERIC K-01X
プリアンプ:Accuphase C-2820
パワーアンプ:Accuphase A-70
イコライザー:TRINOF ST2

ケーブルはオーディオリファレンスのJPSが中心に使われていた。

まずはじめに、ざくっとトリノフのST2の説明を受ける。
ST2は今回プリとパワーの間に接続されていたがこれはDACとプリでも良いらしいし、
本機をNASにつなげてネットワークオーディオとしても使える。
さらには、DDCをかませることによりPCと直接繋ぐことが出来、ある意味これ一台で何でも出来、完結している。

 

セッティングは、事前にすべてが完了していたのだが、話によると、特殊マイクでザーというホワイトノイズを3回マイクで拾ったらそれでもうほぼ完了だという。

下の写真の上のグラフが補正前のグラフである2KHz辺りに大きなへこみがあるが
下の補正後のグラフをみると細かいへこみもすべてフラットにしてくれているのが分かる。

上記の写真ではF特であるがトリノフはほかにも残響特性なども補正してくれる
グラフを見てもなじみの無い数値がならんでいてよく分からないがとにかく自動ですべてやってくれるのだ。

測定が終わったら後は、トリノフが用意した基本的な5つのプリセットを選ぶだけだ。
Natural、Monitor、Neutralなどがあり好みで使い分けることが出来る。
今回は評論家先生おすすめのPrecisionを中心に聴いてみた。

もちろん従来からあるようなDG58といった機種で出来るイコライザーとしても使えるのだが
ほとんどの場合、基本プリセットで十分なようでトリノフも、手動での細かい設定は推奨していない。
これには二つ理由があり、ソフトがそこまで細かい動きに対応できずうまく反映されないことがあるのと、専門家でも無い限り正しく補正するのは難しいという。
ただ、100Hzをすこし盛って高域をすこし下げると行った簡単な操作はワンタッチでできるので遊び道具として十分だと思われる。

基本的な操作はiPadやiPhone、もちろんAndroidでもPCでもいけるのだがこれがやや重く業務感があり最初は戸惑うと思う。

しかし、iPadの使い方も全く分からないようなお年寄りでも一度測定して設定を保存してしまえば
電源スイッチを入れるだけですべての機能が発揮されるので操作の難しさは凝らなければどうと言うこと無いらしい。

もう既にF社ではこの1年弱でトリノフST2を5台売ったという。
どうにもトリノフに関してはオーディオマニアは二種類の反応が返ってくるらしく、
オーディオルームへ宅配試聴して手放せなくなってしまう人と、
逆にそれを怖れてはなからうちはいらないときっぱり断るのだと言う。
つまりはこのトリノフ、試してしまったら買うしかないようだ。

説明がやたらと長くなってしまったが音を聞いてみることにする。
まずは確認のためにダイアナクラールをかける。
THE GIRL IN THE OTHER ROOM から
3.Temptation
9.Narrow Daylight

久々の802SDはなんだか俗によくいうケブラー臭さが耳に付いた。
中域がどうにも落ち着きが無いのだ。
若干の懐かしさと現在のメインシステムの完成度を確認した。

ボリュームの感覚とこのシステムの音をざっと把握し聴きたい曲をずかずかかけていく。

今回の試聴では一曲につきオプティマイザーONOFFの二回ずつ聴くというやや面倒なことをした。
そのために長時間たいざいしたにもかかわらずかけられたのは6曲のみ。

定番のPureから
7.エターナルラブ

TARITARIから
心の旋律 #6EDver

エブリデイワールドから
エブリデイワールドのyukino soloとYuiSolo

坂本真綾のFollow me up から
4.SAVED
9.これから

上流がK01XなのですべてCDだ。

今回も試聴動画を用意してあります。よろしければご試聴ください。

【ニコニコ動画】オーディオショップでトリノフST2、Pureを比較試聴してみた。
【ニコニコ動画】TARITARI心の旋律でトリノフST2を比較試聴してみた
【ニコニコ動画】坂本真綾「これから」でトリノフST2を比較試聴してみた

Pureではヴァイオリンのきつさが気になる曲なのだが、忠実設定のプリセットPrecisionですら
高域が非常に滑らかになった、その反面鮮度感や解像度感といった情報量がやや落ちてしまっているのが少し気になった。
これは高域の刺さりとトレードオフかなと思う。それ以上に低域があまりにもすっきりとしているのだ。
音量が全く同じなのに耳辺りがよく、音量をさらに上げたくなるような感覚だ。

ヴァイオリンの音が大体2kHzで部屋の特性で2kHzを大きく上げるとさすがのトリノフの補正能力でさえキャパオーバーになるらしい。
ST2での補正は±10dBが限界らしいので、補正に頼り切らずある程度のセッティングやルームチューニングは必須となる様子である。

TARITARIや真綾のボーカルが加わるとさらに顕著に耳辺りの良い聞きやすい音、耳辺りは良いのだけど、音は生き生きとしている。かけた瞬間にこれは全く違うと笑えるほどにだ。
今回の試聴ではトリノフが必須のように思われるほど一糸乱れぬ整った音に変身するのだ。
それはまさにスピーカーが2ランクも3ランクも上がったような感覚で、スピーカーが”変わった”と言って良い。

エブリデイワールドでは、YuiでNatural、yukinoでMonitorのプリセットを選択した。
このプリセットは本当によく出来ているようで、Naturalであるならスピーカーの特製が最大限イカされるような鳴り方で、Monitorでは完全なフラットな音が提供される。

ソナスのような音の濃いスピーカーではNaturalやNeutralがよさそうである。
ただ、納品したガルネリメメントユーザーのお宅では主にMonitorをつかっているというので本当に好みの問題のようである。

また全帯域を緻密に補正するトリノフであるがオーディオ機器が持つ個性はしっかりと残る。
もちろんアクセサリーも反応するというので、オーディオ的な楽しみも十分に残っているようだ。
これはB&Wのケブラーや胴鳴り感もそうだし上流のプレイヤーの音もキッチリと出てていた。
基本的なオーディオへの投資を吝かにしてはいけない。
つまりは適当なシステムにST2をぶっ込んでも大した恩恵は得られないのだ。

完成されたシステムにトリノフを入れてやるとまさに完璧になる感じで、
木工の仕上げのコーティングのような一手間である。

トリノフ試聴会はしないのかと尋ねると、
いや自宅に持って行くのが最もわかりやすいのと隣の広いメイン試聴室ではあまり効果が実感できない。あたりまえだけれども、オーディオ用にはじめから設計された部屋では効果が薄いのだ。

だから、リビングオーディオや、徹底したルーチューニングが難しい部屋ではトリノフが凄まじい効果を発揮するのだという。

また、このST2は買うだけでは無く借りるだけでも大きいな効果が期待できる。
普通の機材では判定できない部屋の特製が4本の特殊マイクによって丸裸にされるのだ。
通知表を貰うようなわくわく感と怖さがトリノフの試聴にはある。
それを見てトリノフを導入するもよしセッティングや構成を見直すもよし。

もう一つ上記でも言ったとおりトリノフでも限界がある。
限界を超えないようにセッティングする必要があるのだけど、そのセッティングが部屋のベストポジションに近い形になるらしい。
つまりは音響特性を計りながらスピーカーのセッティングを少しずつ煮詰めていくことが出来るのだ。
これは測量機や感覚でやるよりも遙かに効率的にセッティングができるらしい。

是非ともアメジストの試聴機が空いたら試してみたいものだ。
現在の部屋がどれだけ良い特性がでているのか非常に興味がある。

何にせよ、ハイエンドオーディオの世界ではデジタル技術に限りまだまだ発展の余地があるようで
トリノフではスタジオやコンサートホールでのプロの技術が惜しみなく注ぎ込まれたST2にオーディオ業界の新しい未来が見えたようであった。

今回の試聴では、エソとアキュで802がここまでなるのだ!という趣旨のデモだったのだけど
うちのメインシステムには及ばず、すこしホッとしたのと、手放してしった802、B&Wの音がえらく遠くに感じられてしまった。
それでもこの短時間のデモでオーディオ機器機をここまで高いレベルまで引き上げてくれるのだからST2はお店としても手放せないとか。

アメジストを借りたらもっと詳しいレビューを書くとしてST2のレポートはこの辺りにしておく。

< おまけ >

プレイヤーとプリの間をつなぐXLRケーブルはあまりにごついケーブルが終始あまりに存在感をはなっていたのだけど
最後の最後でIさんがそのケーブルいくらだと思います?

 

というので
30万くらいでしょ?というと
にんまり笑って黙り込むIさん。「最近のオーディオ市場は結構いってるからな~」
ええじゃあこれ100万円超えちゃうんですか!!!!!と言うと「そうこれ100万円!」
JPSのS-AL1.0M XLR 参考小売価格 1,000,000円(税別)
しかもこのケーブル、お一人買った方がいらっしゃったようで

JPS好きで新製品が出たと分かるとぽんと買っていったらしい。
こわい。

 

 

 

 

 

ついでにプリパワー間もJPSのケーブルが使われていた。
ただし12m。

ついでにこの802Diamond。
使用期間は3年だというのだけれど新品のような輝きでなぜかと聞いたら
シアター用として使われていたらしい。その人はもうオーディオを辞めたらしくF社へ売ったとか。

そして3日で買い手が付いてしまったのだけどそのひとは
神奈川からF社へはるばる来店されたらしく
そのとき、東京でハイファイ堂とユニオンで802を聴かせて貰って気に入ったが
それ以上にF社の試聴室で聴いた802が一番良かった、とてもよく鳴っていたと満足そうであったとか。
今日中に購入の是非が電話でくるらしいのだが店を出た6時の段階ではまだであった。

ついでに試聴の際はCHガン積みのとんでもないシステムにトリノフを入れていたとか。
それはもう…反則じゃん?

ST2レポート おわり。