涼宮ハルヒの憂鬱アニメ放送から今年で10年となった、2016年7月7日、七夕の日。実際自分がアニメ本編を見ることとなったのは放送された2006年のその翌年2007年なのだけど。七夕になるとハルヒ関連でなにか動きがあるだろうと公式サイトを毎年のように見ていたのが懐かしい。もはやそれも過去のことのようだけれど様々な出来事が積み重なりユーザーはハルヒ界隈を出たり入ったりうろうろしていた印象だ。それでも、七夕が来ると条件反射的に何となくハルヒを思い出してしまうのだから罪深い作品かも知れない。先日、けいおん!のハイレゾが解禁され懐かしさに浸っていた矢先のこと、今度は、七夕の昨日ハルヒ全楽曲がハイレゾ&BOXCD として解禁された。第二期いや第三期ではないのかとまた肩を落としたファンは多いようであるけれどここ数年盛り上がってきたアニソンハイレゾのなかでも最も大きな出来事の一つである気がしている。ハルヒという作品、巨大コンテンツがそれだけ多くのファンに愛されていたと思うし、今現在でも忘れられない作品の一つであることは間違い。アニメ界の内側外側でハルヒが成し遂げてしまったことがあまりにも多くここでは表現しきれないのだけど、あの頃僕らは、アニメを見るだけでなく、ネットで感動を共有してさらにまた広めると言ったようなアニメへの関わり方が大きく変わったきっかけとなった作品だ。

しかしながらそれには、大きな壁があった。当時、光回線の普及率はまだそんなでもなかったし、主なファン交流の拠点となっていたYoutubeはとんでもなく画質も音も悪かった。また00年代中盤ではあるけれど音楽のデジタル処理技術は完璧とは言えなかった。加えてオーディオ業界ではまだCDの音が悪いというのが定説であったようだし、実際にそのCDは音圧が高く録音が悪いために、普通のオーディオシステムでは、いい音で鳴らすことが非常に難しかったようである。00年代、数々の楽曲が発表されたのだけどそのほとんどが音が悪く聞けた音質ではないというのが当時の一般的なオーディオマニアの評価だったと思う。

10年という月日が経ち、ブロードバンド時代を超えPCの処理能力はほぼ限界に近くなり、ユーザーのオーディオ再生環境そして現場の制作環境など、いい音で聴く条件は揃いきったと言っても良いと思う。1日だけ遅れてしまったけれど涼宮ハルヒの完奏~コンプリートサウンドトラック~ ハイレゾverをレビューしてみようと思う。


音源:e-onkyo 24kbit/96kHz flac
再生環境:Mac mini Late2014 EL Capitan10.11.4
Audirvana plus 2.5.1.4
DAC ESOTERIC D-02X
Speaker VIVID AUDIO G3 Giya / amplifier LUXMAN&TRIGON

涼宮ハルヒの完奏~コンプリートサウンドトラック~ ハイレゾver音質レビュー

149曲 4時間48分というアニメ作品の楽曲としては非常にボリューミーな本作。ハイレゾ版では容量が6Gを超えている。最近でもe-onkyoもDL速度がかなり安定しているとは言え、すべてDLするまで30分かかった。待たされている時間が今までになくもどかしくワクワクさせられた。
moraでもeONKYOでもアルバム購入特典はスマホ用の壁紙となっている。ぶっちゃけハイレゾ販売には、アルバム特典はあまり必要性を感じない。それでもサントラを抜いた歌だけでも4千円以上になってしまうためアルバムごと購入した。初めてのサントラ単体?販売でもあるし記念としてもサントラも一緒に買っておいて損はないような気がする。しかしながら、サウンドトラックについては当時CDとして市販されておらず聴くことが困難なため、トラック138~149の歌だけのレビューとする。またFlacをDLしたが再生ソフトがiTunesであるためすべて、XLDでALACに変換してある。

全体の印象をざっくりまとめてしまえば音圧がおとなしくなって、楽器やボーカルのディテールが非常に良く出るように鳴り、全体の音像バランスが非常に良くなったと感じる。

☆楽曲ごとのレビュー
138.冒険でしょでしょ?

第一印象はチューリップみたいにキュートな声にしびれる。色は黄色っぽいピンクだろうか。ハイレゾでは表情が見えるようで、幼さも感じるほどに懐かしくほっぺがまだぷにぷにと柔らかく弾力に富んでいるようだ。みずみずしくも張りのある声でCDでは到底感じられなかったようなディテール感をボーカルに感じる。何よりの変化は、ノイズに埋もれ聞こえなかったボーカルがずっと前へ出て分離するようになったことだろう。声を重ねている部分ではまだ消化不良を感じるが、音数が少ない場面では十分な解像感が得られている。音の位置関係も非常に明瞭に感じる。

139.ハレ晴レユカイ

ハルヒという世界、コンテンツを象徴すると言っても良い楽曲、ハレ晴レではあるが、CDでは大変音圧が高くあまりにものっぺりと抑揚がなかった。それが、全体にまとまりがよくなって、ボーカルに厚みを感じるほどにしっかりとハーモニーを奏でている。完全に埋もれて聞き取れなかった長門の茅原実里の声があまりにも地声なことに気づいてしまった。10年のタイムラグを経て驚きを隠せない。定位も大きく改善している様子で、ごちうさのときめきポポロン♪ほどではないが、3人が架空のステージで踊っているような錯覚さえもほのかに感じられた。

144.風読みリボン

ホールの大きさが分かるような残響のグラデーションが見えるくらいにはディテールがある。冒険でしょでしょ同様に声は10年前の平野綾を再発見できる。歌唱としては、やや歌い切れていないような感じもまたアイドルっぽい初々しさを感じさせてくれる。曲としてはボーカルの加工が単調で方向性がわかりやすくOPよりもずっと鳴らしやすい音質のように感じる。

145.うぇるかむUNKNOWN 146.最強パレパレード 147.運命的事件の幸福

曲調が非常によく似た3曲なのでまとめてレビュー。打ち込み全開の曲であり、CDとの違いが判りづらいのだけど、パレパレードの低域はかなり深いとところまでスカッと出ているし、どの楽曲でも打ち込みのシャキシャキ感は心地よい。実はハイハットの音もドラムの音もしっかり楽器を叩いていたんだなといまさらになって気づいたりもした。やはりここでも長門のキャラを放棄した素の茅原実里が感じられる。ハルヒといえば七夕の印象が強いが、OP映像同様に流れ星が飛んでいくようなキラキラ音が流れていくがはっきり聞き取れる。

148.Super Driver

実質第2期のOPであるが、元からそんなに悪い音ではなかったと今でも思う。ただやはりハイレゾになりバンドっぽい強い勢い、アタック感がずっと増していることに気づく。ハルヒの暴徒とも言える校舎の廊下や部室の扉をバタンと勢いよく開け放つような、止まることのない疾走感が印象的だ。ボーカルでは劇的な変化は感じられないけれど、声のこもりがやや軽減されておりベールが一枚取れたようなはっきりとした声だ。ギターもドラムも楽器の音が非常に生き生きしてメリハリを感じる。音圧が下がった影響か、ややおとなしさを感じるのだけど、元のCDを聴き直すとなぜか疾走感はずっとハイレゾ版の方が上で、CDではゆっくりと時間が流れているようである。

149.止マレ!

OPとは対極的にハイレゾマスタリングの恩恵がよく出ている曲だ。一音一音の余韻がはっきり感じられて消えては現れる音に音楽を感じる。
ハレ晴レに近い変化なのだけどよく聞けば、止マレ!の方がステージ感が非常によく出ていることに気づく。

143.恋のミクル伝説

後藤邑子の技術力に気づく解像感の著しい上昇を感じる。安っぽく作ってあるミクル伝説であるけれど、わざとっぽさがより引きたっていて面白い。ハイレゾでは逆にボーカルをすこし下げて楽器の音を前へ出したような印象だ。あとから楽器を付け足したのかと思うほどにタンバリンの音がはっきりとしている。こんなにもネタ全開で作ってある曲がなぜだか感動的に思えるのだから10年という時は怖い。

140.God knows… 141.Lost my music 142.First Good-Bye

こちらも元々のCDがそんなに悪くはない感じなのだけど、聴き比べれば、音質の著しい上昇は一目瞭然だ。音のささくれ感が大幅に減り躊躇することなくグイグイと音量を上げたくなる。音量を上げるほどに、ボーカルが浮かび上がりバスドラムのペダルの様子がくっきりと見えるようで、ライブハウスや体育館のよどんだ空気感、スポットライトに浮かぶ埃っぽさまでも感じられる…音の若干の籠もり感も含め部屋の様子はライブハウスのそれのようである。God knowsよりも感情を込めて歌っているLost my musicでは10年の時間を感じさせる。
平野綾の初々しくもチャーミングな歌声に聴き惚れる。あのときのキュッキュッとした麗しい笑顔が浮かんでくるようだ。悲劇的事件の幸福やうぇるかむUNKNOWNのような宇宙空間のような音場表現とは対極的に、ちょっとだけ外れるようなギターや荒々しいドラムもあくまで文化祭の体育館ないしはハコで歌っているかのようなリアリティある臨場感を優先させたマスタリングだと感じる。First Good-bayでは平野綾のノリが非常によく、ベースもぐいぐいと唸るようでドラムもギターも楽しそうに演奏しているのが覗える。アニメではすごい表情をして腹の底から全身で歌い上げている様子が見られたけど、まさに魂のこもった演奏に拍車がかかったようなハイレゾだと思う。

 

涼宮ハルヒの完奏~コンプリートサウンドトラック~
TVサントラ アニメ・サントラ 涼宮ハルヒ(平野綾) 長門有希(茅原実里) 朝比奈みくる(後藤邑子)
ランティス (2016-07-07)
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あとがき

サントラをゆっくりと聴きながらレビューを書き連ねてみてけれど、何年も前に見たはずのハルヒがつい最近の出来事のように思えてしまうのは、本編をあまりにも何度も見過ぎたからだけなのだろうか?。冒険でしょでしょにしてもハレ晴レにしても音が違いすぎて違う楽曲のようでなんだかそれはそれで寂しさを感じるかもしれない。ハルヒ楽曲全体では音圧が高めで鳴らしにくいことこの上なかったのだけど、今回のハイレゾでは大方ボリュームを一段二段上げるだけでそれっぽく鳴ってくれるように感じる。後々、自分で読み返してもドン引きしてしまうほどに褒めちぎってしまったけれど、ハルヒというコンテンツにはそれほどまでのパワーがあるように感じる。なんにしたって、音楽は色あせないと感じさせられた10年目のハルヒのハイレゾだ。アニソンの進化と自分の深化を感じつつハルヒのハイレゾを聴いていた。

おわり。
最後までお読み頂ありがとうございました。

2022/06/19 リライト