オーディオ用の製品で一番効果的なものは何でしょうか?一つ答えるなら、壁コンセントでしょう。しかしその奥には、ブレーカー、さらにはマイ電柱という、なかなか手の届かない電源アクセサリーが存在すると考えます。今回は、オールージュのオーディオ用ブレーカーを取り付けてみました。オーディオでは電源が非常に重要な役割を果たしています。しかし、最近ではオーディオ用ブレーカーの製造がほとんど行われておらず、またオーディオ用の屋内配線なども以前は数社が製造していたようですが、現在ではほとんど見かけません。このようなオーディオ製品は基本的に、部屋を改装しなければ使用できないパーツであり、無理矢理使うにしても簡単に使用できるものではありません。

そんな超ニッチで希少なオーディオ製品であるオーディオグレードブレーカーが、おととし頃にモデルチェンジして再販されました。旧モデルは「CP-BR/20Au SE」であり、今回導入したブレーカーは「CP-BR/20Au HG」です。ちょうどヤフオクでオールージュのアウトレット品が沢山放出されていたので、旧モデルも1台買ってみました。さらに、これらのブレーカーと同時に販売されている専用インシュレーターの「SG-BRB」も2枚併用することにしました。 オーディオグレードブレーカーの今回は取り付けレポートです。

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【Vlog】オーディオルームの専用ブレーカーをオールージュのCP-BR 20AuHGに交換しました

オーディオ 分電盤 工事前

こちらがうちのオーディオルームに設置されているオーディオ専用ブレーカーです。電気契約は80Aで設定されており、オーディオ用と生活用にそれぞれ40Aずつ割り当てられています。オーディオ用に40Aを割り振ることで、電力供給が非常に安定し、常に100V以上の電力が供給されます。また、通常は一体型のコンパクトブレーカーが使用されますが、ここでは昔ながらの個別配線の大型ブレーカーを採用しています。さらに、家全体のVVFケーブルも通常使われる1.6mmよりも太い2.0mmのものを使用しています。そして、オーディオに理解のある電気工事士さんが家中の配線を丁寧にオーディオ用に配線しています。ケーブルインシュレーターなどと同じで、配線方法でも音が変わってしまいます。さらにそこから上流側ではアクロリンクの電源ケーブルを屋内配線として使ってISOTEKにつなげています。単身ワンルーム程度の小さなブレーカーがオーディオルームに配置されていますが、子ブレーカーの追加や三層線の引き込みがここまで行われているため、将来的には200Vを導入することも可能で、拡張性に余裕をもたせています。

ブレーカーにつないだアクロリンクのケーブル。末端にフルテックのインレットをそのままつけて壁コンセントレスにしている。

緑のシールが貼られているのがパワーアンプ側の子ブレーカー オレンジのシールが貼られているのがPC用のブレーカー

緑のシールが貼ってあるのが上流側のオーディオ用ブレーカー。アクロリンクのケーブルでISOTEKに直でつながっている 一個オフになっているのは予備回線で現在は何も使われていない。

子ブレーカーは、それぞれパワーアンプ用、上流用、照明用、PC用、およびその他の用途に分けられています。床暖房やエアコンに関しては、オーディオルームのブレーカーではなく生活用のブレーカーから引かれているため、ノイズの干渉が少ないです。三相3線式の配線を使用しているため、エアコンを稼働させるとオーディオルームの壁コンセントのノイズ値は多少上昇するものの、音への影響は比較的小さいです。ただパワーアンプ側の子ブレーカーは1つから3つのアンプをならしており、1つのアンプにつきブレーカー1個だったなとすこし後悔しました。それでも、3つに分けたら今度はオーディオグレードブレーカーも3つも4つも必要になるので、1個だけでもある意味正解だったかもしれません。

CP-BR/20Au 上が最新モデルのHG、下が旧モデルのSE

CP-BR/20Au 左が最新モデルのHG、右が旧モデルのSE

CP-BR/20Au SE CP-BR/20AuHG

CP-BR/20Au 左が最新モデルのHG、右が旧モデルのSE HGはステッカーが剥がされてネジがマイナスになっている。

CP-BR/20Au 左が最新モデルのHG、右が旧モデルのSE オールージュのロゴステッカーが変わっている

オールージュの極厚金メッキブレーカー「CP-BR/20Au」のSEとHGの比較についてです。 SEモデルでは、基本の普及品に金メッキが施されているだけですが、HGモデルでは金属パーツがオールージュオリジナルになっています。接点部品は無垢無酸素銅を削り出したハイグレード仕様に変更されています。細かいところでは、ネジがプラスからマイナスネジに変更されたり、ロゴステッカーが異なったり、シールが剥がされているなどの違いがあります。SEとHGの価格には1.5倍以上の差がありますが、スペックだけを見てもその差はかなり大きいと思われます。

オールージュ インシュレーター SG-BRB

ついでに購入しておきましたブレーカー専用インシュレーターの「SG-BRB」です。この製品には、厚さ1mmのオールージュ特注のドライカーボンが使用されています。非常にシンプルな製品ですが、1枚あたりの価格は4800円(税抜)です。2枚購入してみました。オーディオ製品の中でも、これほどマニアックでニッチな製品はなかなかないでしょう。しかしこういった小さなパーツがオーディオにおいて重要な役割を果たすため、軽視することはできません。ドライカーボンと電源はかなり相性が良いと感じます。コスパについては…どうでしょう……?

FORMUSICのIさんにブレーカーの交換を依頼しました。ブレーカーの交換はネジを外して締めるだけの単純な作業ですが、電気工事士の免許が必要不可欠です。一応、壁コンセントや照明の電源スイッチは自己責任で変えることができると聞いたことはありますが、できるだけプロに任せるべきと感じます。
ブレーカーをいじりつつ、おしゃべりをしながら楽しく交換が進んでいきました。

上の画像はブレーカーの交換が終わった分電盤です。新モデルのHGが2つと旧モデルのSEが1つ、合計3つをオーディオグレードに換装しました。パワーアンプやプレーヤー、プリアンプなどの上流にはHGモデルとカーボンインシュレーターを使用し、電力消費が多いPC用のブレーカーにはSEを設置しました。一見すると何が変わったのか分からないかもしれませんが、よく見るとネジが金色になっています。

 

ブレーカーをパチッと上げて、事前にしっかりと聴いておいた4曲を再度聴いていきます。 一聴してわかるのは、どこがどう変わったと言うよりも全体のレベルが引き上げられていることです。最上流に位置するブレーカーは音に与える影響が非常に大きく、変化の度合いも、初めて壁コンセントをPanasonicからフルテックのものに変えた時よりも大きく感じられます。オールージュ製品では極厚金メッキが多用されていますが、金メッキ特有のギラギラした感じや押しの強すぎる感じはありません。代わりに全体的な解像度がほどよく向上し、楽器や声の生々しさが一段と際立つように感じます。旧モデルでは、やや過剰なパリッとした音が特徴だったようですが、おそらくSEモデルとHGモデルでは音の特性がかなり異なるのだと思います。金メッキは同じですが、内部のパーツが普及品の鉄から無垢の非磁性体無酸素銅になっているため、非常に聴きやすい音質になっていると思われます。一度に3つも交換すると、高域が騒がしく感じたり、音の粒立ちが逆に荒く感じるのではないかと心配していましたが、実際には非常に滑らかに感じられます。金メッキの特徴はある程度感じられますが、無メッキの鉄製ブレーカーとの比較では明らかに良くなっていると感じました。

また、ドライカーボンインシュレーターが良い効果を発揮しているように思います。たった1mmの板ですが、カーボン特有のニュートラルな質感で電磁波由来の靄や金メッキの過剰さを上手く中和しているように感じました。実際に取り外して比較したわけではありませんが、ブレーカーを交換する際にはこのインシュレーターは必須アイテムだと感じられます。なによりドライカーボンと電源アクセサリーは相性が良いのです。

しかしながら、PC用電源にもインシュレーターを入れたのは必要なかったように思います。確かにPCが稼働していると音が鈍くなることはあるかもしれませんが、この部分では影響が少ないため、そこまで神経質になる必要はないようです。率直に言えば、悪い影響が少し入っていても、それは多少の違いにしかなりません。加えてPC用電源と言っても、PC本体はISOTEKから給電されており、PCモニターやHDDにはGreenwaveのDirty Electricity Filtersを使用してノイズを軽減しているののでそれだけでもう十分な気がしました。

オールージュのブレーカー「CP-BR/20Au HG」は、広く多くのオーディオマニアにおすすめできる一品だと思われます。オーディオマニアの中には、無メッキやロジウムメッキなど好みがあることはもちろんですが、オーディオ業界では広く普及している壁コンセントとは異なり、ブレーカーにはそのようなバリエーションが存在しません。もし可能であれば、フルテックからも無メッキ、金メッキ、ロジウムメッキ、銀メッキなどの選択肢があれば良いと思いますが、あまりにもニッチな製品のため、究極的にこだわりたい人は自作するしかないと思われます。普及品にメッキを施したり磨いたりすることは、個人では少し難しいですが、そのようなサービスは存在するのでやりたい人は…。。
かつてはスーパークライオのブレーカーなども存在しましたが、現在市販されているのはオールージュのみです。EMC設計がオーディオ用ブレーカーの設置を行っており、SNSなどを見ると結構人気があるようです。もし可能であれば、スーパークライオのブレーカーをパワーアンプ側に使用できると良いなと感じました。

今回、オーディオブレーカーに交換した際、ブレーカーの取り付けにはトルクスドライバーを使用し、トルク管理も同時に行いました。圧着ネジについてはマイナスだったため手締めにてしっかりと締めましたが、取り付けねじはトルクを揃えて取り付けました。これも意外に効果が大きいように感じます。壁コンセントなどでは実際に研究が進められていることもありますが、ブレーカーの存在は忘れがちかもしれません。ただ、具体的にどの程度のトルクが適正かはまだわからないので、とりあえずやや緩めに締めてあります。取り付けネジの締め付けについては後で自分でもできるので、少しずつ締めていく予定です。最大トルク、最大トルクの85%、75%とやっていくとわかりやすいかなと思います。
トルクスドライバーについてはオーディオではかなりの万能アイテムなので一本持っておくことをおすすめします。アンプのネジだけでなく、壁コンセントの固定ネジなどもトルク管理を行うと音が整います。

ブレーカー自体は、一般的な製品と比べると値段が10倍以上になりますが、オーディオ製品としては非常に手頃な価格に感じます。最近では10万円や20万円の製品存在する壁コンセントと比べると、かなり安いと感じてしまいます。実際に音の変化を感じると、壁コンセントよりもブレーカーの方がより強い影響力を持ち、電源アクセサリーの中ではコストパフォーマンスが高いと思えます。何よりも、上流側に位置するため、一箇所だけ変えるだけで全体に効果が現れるため、ブレーカーの存在は無視できません。ただ一つ言えるのは電源において接点は重要だと言うことです。電源プラグをアルコール綿で拭いただけでも音が変わってしまいます。
しかしながら、このタイプのブレーカーが使用できる住宅は最近ではほとんどありませんので、それが非常に残念な点です。それでもオーディオ趣味の底なし沼では、壁コンセントの向こうにあるブレーカーですらまだ最終到達点ではありません。雲の上にはMY電柱&オーディオグレードアースが存在します。また、家庭用電源とは逆方向に、クリーン電源付きのバッテリーなど、ステラが提供するストームタンクのような選択肢も存在します。超絶お高いです……。世界には電源環境を追い求めて引っ越しをするマニアもいるかもしれません。私の現在の住居では電圧は問題ありませんが、昼間のノイズはやや多めです。また新潟市はどこも地盤が緩いために地盤改良を行っても大型トラックが来ると揺れます。

電源環境、どこまでこだわるべきか考え出したら……。果たしてそこにゴールはあるのでしょうか?