オーディオハウスの工事は順調に進みひとまず、現場もお盆休みに入り工事は一時的に中断している。ちょうどこの酷暑だ、骨休めになるだろう。
家を作っているといままで気づくことのなかった様々なことについて知ることになる。それは家の構造や仕組みが分かるだけでなく、人として人生についての何かも考えさせられ気づかされるようだ。
オーディオハウスを作っている。それはつまりオーディオ専用の”家”。よくあるオーディオルームではなく、オーディオルームを作るために家を作ってその中にオーディオ部屋を作るわけだ。なんだか意味の分からないこと言っているけれどとにかくオーディオ専用の部家を作ってる。
オーディオ専門の部屋を作る中ではただオーディオをやっているだけでは到底気づきようがない些細なテクニックや家の構造的ななにかだったりを様々なかたちで実感したり知ったりすることとなる。
専用オーディオルームにはありとあらゆる工夫や智慧が盛り込まれている。オーディオショップや音響メーカーだけが個々に知っている知識が詰め込まれているのだ。それは関係者や実際に作った人にしか知り得ることのできない情報がたくさんある。もしかすると、究極の部屋を作ろうとしたら業者を変えて3回建ててもたどり着けないかも知れない。
実際にオーディオルームを設計していく中で企業秘密とされている内容は多く、他の企業がどこまで同じようなことをしているのか想像もできない。
専用の部屋を作るだけでも大変に稀で贅沢な行為だけれど、その千載一遇のチャンスを生かすも殺すも、設計者が鍵を握っている。というのも、ネットを調べても本を調べても専用ルームに関する情報というのは余りにも少ない。
個人のブログを漁ってみても実際に建てた方のレポートというのは数が限られている。オーディオ機器のレビューでさえも個人が特定できるようなこのオーディオ業界で部屋のレポートなんてどうして沢山みることができようか。
しかし、専用リスニングルームの研究資料として最も有名な本がある。
石井 伸一郎氏のリスニングルームの音響学だ。大手家電メーカーの技術者だった石井氏がほぼ全ての研究データーや考察をまとめたいわば論文のような本だ。
石井式オーディオルームという名前でコストは控えめで間違えない音の部屋が作れるとファンも多いように思う。
海外のレポートを探せばもっと色々な情報が得られそうではあるけれど、日本でえられるオーディオ部屋の専門知識はあまりにも少ない。
ちなみの本書はオーディオマニアなら誰しもが読んでいてそんはない内容になっている。特に後半部分の内容は非常にためになる情報が盛り込まれていると思う。kindle版もあるしこの機会に一冊買って読んでみることをオススメしたい。
F社のS本社長と話しながら分かってきたオーディオルームのことを少しだけメモ程度に書いておこうと思う。大したことは言えないけれど、自分の今の部屋を参考になぜ今の部屋が音がそんなに悪くないのかについてもかるく考察してみた。
F社で家を作りながら石井式の本を読みながら、分かった良い部屋とルームアコースティックの話
部屋が良いというのはオーディオにとって大きなアドバンテージである
どんなに良いオーディオを入れてどうがんばっても解決できない音の問題は意外に多い。これは石井式の本でいくつか指摘されているけれど、部屋による音響特性はオーディオ機材でカバーできる領域を超えている。セッティングをいくらがんばってもアクセサリーをいくら使っても解決できないのだ。
もし賃貸に住んでいるなら、借りる部屋は防音がある程度されているか音を出しても問題ないような立地かがまず大前提であるけれど、次に頭に置いておきたい項目は部屋の使いやすさだ。
ざっくり言ってしまえばステレオシステムを置いた時に左右対称になるような部屋がベスト。部屋がシンメトリーというだけで、そのオーディオの価値はプラス1千万円を見積もっても良いくらいにとても重要な項目だ。
オーディオマニアが呪文のように唱えている天井高は確かに重要なのだけど、天高という一つのパロメーターよりも、部屋の3辺の比率の方が重要になってくると思う。石井式では部屋の比率をとても重要視している、つまり比率を保つために広い部屋では天高が必須になってくるわけだ。比率なのだけど日本の6畳間が非常に黄金比に近い比率をしているという。現在使っている3rdシステムのミニマビンテージを置いている部屋がちょうど6畳で、体感でも広い歪なリビングよりも綺麗な立方体に近い6畳間をオーディオ専用に使った方が音は確かに良くなるようだ。リビング特有の冷蔵庫などもない分さらに環境音も少なく、6畳の何もない部屋は音楽再生には向いている。
部屋が20畳あっても30畳でさえも天高が2700mm以下なら6畳間のほうが音が良くなっているケースの方が多いだろう。それだけ部屋の比率は大事なのだ。
部屋がシンメトリーを保っていれば大体のことは許される。
一般的な洋間の欠点として挙げられるのは、床や壁の強度だったり天井の低さだったりするけれど、その他には出窓や上げ天井などもちょくちょく聞く話だ。
今住んでいるリビングは大きな出窓があって天井は10cm部分的に上げてある。これが一見するとオーディオにとってマイナス要因に感じられるが、うちの場合では、部屋がシンメトリーに作ってあったために程よい部屋の凹凸となり逆に音響的に良い結果を生み出している。あるときトリノフのアメジストを借りて部屋のF特を測ったところ、60Hzあたりに大きな凹みがあるがそれ意外は10KHzまでほぼフラットなのだ。
シンメトリーさで言ったら、シーリングライトを取っ払ってダクトレールを付けてスポットライトを付けたのだけど、これもまた左右対称に取り付けられており、スポットライトの金属が程よく音を拡散させると言う。
オーディオルームというのはできる限りのシンメトリーでありつつも、その細部は複雑に凸凹している必要がある。それは家具であったり壁の拡散材であったり様々。しかしそれもまた左右対称に凸凹している必要がある。
オーディオルームに置くべき物。音をよくする置物
オーディオルームには余計なものは置いてはいけない。それはテレビであったり机であったり…。しかし逆に置く音が良くなるという例外がある。
一つは観葉植物。部屋の見た目を整えるだけでなく音響的にも良い。葉っぱには水分が含まれていて人間には再現できない複雑さを備えている。できれば左右対称に置きたい所だけど植物故にすこし難しいのがすこしの悩みどころ。
もう一つ、それは楽器。上の写真ではウクレレがスピーカーのすぐ近くに置いてある。一般的にスピーカーの周りにはモノはおかない方が良い。しかしあるときアッコルドを併設させたところ、隣のギヤを鳴らしてもアッコルドの箱鳴りが付加されることに気づいた。アッコルドで箱鳴りが加えられるなら、それがアコースティックギターやウクレレならどうだろう?
置けばすぐ分かるのだけど楽器そのものの音がスピーカーの音に仄かに乗ることが分かる。小さなウクレレだからその作用も小さいのだけど確かに音楽的な余韻が付加される。その複雑な形もまた音響的にとても良い。左右対称を保つのはすこし難しくなるけれどオーディオ用のルームチューニング材よりも安く効果は高い。
YAMAHAの大きなアコースティックギターやヴァイオリンやチェロなど楽器が弾けなくてもオーディオルームに楽器を置くというのは大変有効な手段であるといえる。
ザックリまとめると
部屋が左右対称ならほぼ何をしても大抵良い方向へ進むと思う。スピーカーのセッティングも左右の位置をできるだけ左右対称にするだけでいい音になる。内ぶりにするのか平行にするのかまた壁との距離などはほとんど好みの問題と言って良い。またこの壁との距離やスピーカーの高さについても石井氏の本に詳しく書いてあるのでこの駄文よりそちらを参照して欲しい。
現代のハイテクスピーカーに見られるホログラムのような音像定位や音のリアリティは左右対称であってこそ生かされるようなのだ。
とても悲しい話ではあるけれど部屋が左右対称でないとスピーカーの内ぶり角度すらも語れないほどピュアオーディオの道はかなり険しい。
大型スピーカーを部屋いっぱいの音量で鳴らすとなるとやはりその音響成分のほとんどが部屋の音になってくる。しかもその成分は部屋の形に半分以上が依存している。素材とか強度よりもまずは形と比率が大前提。
だから、オーディオをセッティングするときは、部屋が選べるならできるだけ比率が理想的でシンメトリーに近い部屋を選びたい。部屋が決まったら、扉や窓収納の位置、またコンセントの位置などを見ながらできるだけ左右対称になるような位置にスピーカーを配置したい。それから部屋を複雑に凸凹させていくというのが定石のようだ。
結論をまとめると
シンメトリーの美的センスはオーディオ的な音の良さそのもの
専用設計のオーディオルームがどれだけ音響的に有利なのか、逆に言えば既存の部屋でオーディオをやるとどれだけ苦労するのか分かってきた。日本のほとんどの家が防音性能が低い上に左右対称性は考えられていない。
病的なまでにシンメトリーを貫いていてさらに音響的にすぐれた建材や防音が施されているならそれはもう本当にいい音が約束されている。
もしスピーカーをとっかえひっかえやったりアクセサリーで苦心するならば始めからトリノフのような矯正ツールを入れてしまうことがもっとも確実であると思う。非常に乱暴な結論になってしまったけれどそれほどまでに部屋は大事なのだ。
なんだか暴言じみた内容になってしまったけれど今のところオーディオに感じることを大体かけたと思う。オーディオ専用リスニングルームって本当に贅沢の極みなんだなとしみじみ思うのでした。
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