プロローグ

去年の夏、親戚の叔父さんが熱中症で突然亡くなってしまいました。叔父さんはクラシックの愛好家であり、同時にオーディオマニアでもありました。彼の持ち物であるオーディオ機器たちは、どこにも行き場がなくなりましたが、うちがほとんどを引き取ることにしました。これらは一部が中古業者に売却することもできる価値のあるものでしたので、少しプラスαの価格で引き取らせていただきました。
その中で、現在、リビングにはB&WのSignature805があります。私がオーディオに興味を持ち始めた頃、初めて聴いたハイエンドスピーカーがちょうどB&Wの805Sでした。その後、802SDを購入し、現在はVIVID AUDIOのG3 GIYAを使用しています。しかし、805Sの存在は雑誌で見て店頭で聴いた時から忘れられず、特別な思いが今でもありました。あの頃買った802SDは思うように鳴らせずにGIYAに買い換えてしまいましたが、B&Wは今でも私にとって思い出深いメーカーです。特に805シリーズには特別な思い入れがあります。
Signature 805はいつの間にかうちにやってきましたが、とりあえずリビングに置いています。アンプはDENONのPMA60だったりとポン置き状態です。そんなリビングのオーディオ環境を少しずつ充実させていくため、今回は第一弾として少しのアップデートを行います。

叔父さんの家のB&W

とりあえず、アンプはPMA60ではあまりにも貧弱なので、寝室からプライマーのI15を持ってきました。リビングの狭いスペースにも収まり、一台であらゆる要求に応える優れたアンプです。音質はやや寒色寄りのニュートラルな雰囲気で、Signature805との相性も良いと感じます。スピーカーケーブルには、配線を壁内部の配管に通す必要があるため、細くて取り扱いがしやすいベルデンの8470を使用し、オーディオテクニカのYラグとバナナプラグを取り付けました。現段階では、Signature805を中心に、できるだけコストパフォーマンスに重点を置き、シンプルで使い勝手の良いシステムを構築していきたいと考えています。
【関連Youtube】→新居でリビングシアターを作る。スピーカーとテレビの配線とセッティングの仕方

※この記事はヤフオクで販売中の水晶インシュレーターのプロモーションが含まれます。

プライマーのI15のようなオールインワンのプリメインアンプは。便利でコストパフォーマンスが良いです。しかしワンボディ故の弱点は多々あり、特に電源が弱かったり、制震が不十分だったりします。また、Signature805もその時代を代表する名作ではありますが、セッティングが非常にシビアなスピーカーです。そこで今回は、水晶インシュレーターを使用することにしました。以前から、ブレーカーにさざれ水晶を注入したり、さざれ水晶を詰めた袋、通称「水晶枕」を使用して電源プラグの制振を行っていました。そこで水晶の音が別格に気に入ってしまったわけです。

【Youtube動画】→【お手軽】水晶置いただけでオーディオの音が変わった!水晶10kg買ってオーディオに詰込でみた。電源ノイズ対策&制震 オススメのささざ水晶の使い方!

麻袋に水晶を詰めたアクセサリー。これが意外に使い勝手が良い。

メーカーの水晶製品と水晶インシュレーターの自作

水晶という素材は地球上に広く存在し、ごく一般的なものですが、その美しい外観と同様に、オーディオの音質面でも非常に優れていると感じます。特に制振効果や電気的ノイズの吸収においては、非常に使い勝手が良い素材です。このような優れた性能を踏まえて、アコースティックリバイブの天然クオーツインシュレーターや、オーディオリプラスのスーパーサーフェイスインシュレーターなど、水晶を使用した高級オーディオアクセサリーが数多く存在します。アコリバの水晶イシュレーターは、天然水晶を使用しており、価格も4個セットで定価6万円程度とギリギリ買いたいと思える範疇にあり、熱狂的なファンも多いです。しかし、リプラスのハイエンドモデルでは、4個買うと実売価格が30万円以上になります。
率直に言って、水晶製品はオーディオ機器に使用すると音質が大きく変わります。そんな劇的に効いてくれる水晶ですが、私も水晶をブレーカーに入れてから、その効果に完全に魅了され、どうしてもリプラスの超高級インシュレーターを使いたいと考えていました。しかし、リプラス製品は非常に高価です。以前、リプラスのコンセントプレート「CPP-2SZ」を導入してみましたが、ただのコンセントプレートとは思えないほどの明らかな静寂感に驚きました。リプラス製品は価格が高いだけでなく、効果も非常に優れています。ただ、やはり価格が非常に高いと感じます。

オーディオリプラスのHP今年の6月から値上げされさらに高くなる。効果は非常に高い。
https://www.audio-replas.com/insulator.html

オーディオリプラスのインシュレーターは非常に魅力的ですが、大変に高価です。そんなとき、シンプルな円柱状の人工水晶ならば自作できるのではないかと思いつきました。早速、ネットで、水晶製品を制作している工場に水晶インシュレーターの制作が可能か問い合わせてみました。4個や10個の発注単位ではかなり高額になりますが、500個や1000個を作ると比較的手頃な価格で制作できることがわかりました。ただし、500個や1000個を作ることは難しいので、交渉してまずはじめに2種類200個を発注することにしました。合計200個ではまだ単価がやや高いですが、在庫を抱えるリスクが少ない方をとりました。結果的に、最初に発注した200個は自分で使う分と破損した分を除いて全て売り切ることができました。入荷時に大量の破損が起きるなどのトラブルもありましたが、いくつかの困難を乗り越えて、少しずつ生産数とラインナップを増やしてきました。現在では、以下のようなサイズ展開を行っています。

極小サイズの17×9mm
中サイズの30×19mm
大サイズ薄型の50×10mm
大サイズ中型の50×20mm
大サイズ大型の50×30mm

中サイズの30×19mm

中サイズの30×19mmです。オーディオ機器からネットワーク系、HDDまで非常に使いやすい大きさです。

 

大サイズ薄型の50×10mm

大サイズ薄型の50×10mmです。音質的には50×30mmの大型に劣ってしまいますが様々なシーンで使える万能インシュレーターです。

水晶インシュレーター

数パターンの水晶インシュレーターを作ってみた結果、透明度が高く、サイズが大きいほど効果が顕著で音が安定することがわかりました。形状も立方体より円形が圧倒的に良好です。17×9mmのサイズでは効果が薄く、コスパも悪いです。ありとなしでは差があるのは当たり前ですが、大型のものと比べてみると、さらに差が感じられます。また、同じK9の水晶でもロットによってわずかな品質の差があります。そのため、同じような水晶製品でも音質には多少の違いが生じると考えられます。50×20mmのサイズはハズレロットを引いてしまいました……。リプラスの水晶インシュレーターは、おそらく結晶の純度が非常に高く、ニッチな需要と割れやすさからその価格になっているのかもしれません。ホームページには「ゴールデンレシオ(GR)設計」とありますが、おそらく原材料のけい砂、カリウム、ソーダ灰などに独自の配合が施されているのでしょう。今回作った水晶インシュレーターは一般的なK9クリスタルで、置物や優勝トロフィーなどに使用されます。それでも熱伝導率は普通のガラスより高くひんやりとして、モース硬度は7であり、表面は非常につるつるで美しいです。リプラスの製品はさらに滑らかで美しいかもしれませんが…。

水晶インシュレーターのセッティング

今回はSignature 805のインシュレーターとしてもっとも効果が高い50×30mmの水晶インシュレーターを実際に使用してレビューを行います。

ヤフオク 水晶インシュレーター

50×30mmの水晶インシュレーター、水晶はひんやりとしていて重い。

水晶インシュレーター

3個組を2セット用意しました。使用するのは売りに出せなかったB級品です。サイズと重さは大体揃っていますが、少しだけ欠けた箇所があります。50×30mmのサイズの水晶インシュレーターは、リプラスの純正品だと”定価は1個10万円”で、実際に購入すると6個揃えるだけで45万円以上かかります。自作すると、その価格の十分の一以下で手に入ります。それでもちょっと高い感じがしますが……。効果は高いと思います。

リュート型のブックシェルフスピーカーなので、3点支持で設置します。もちろん、4点支持も可能ですが、これは好みの問題かもしれません。リビングに置くスピーカーなので、地震やちょっとした衝撃で接触した際にガタッとずれたり倒れたりしないように、最近流行のアクリルゴムのテープを取り付けました。本来はテープで接着することは避けるべきですが、ここでは安全性を優先しています。


鬼ピタ 剥がせる超強力両面テープ 魔法のテープ

水晶インシュレーターをスピーカーの底面に取り付けました。両面テープを使用する場合は、できれば薄い紙用の両面テープが望ましいです。アクリルゴムは強力に接着されて安定性は確保されますが、音質的にはあまり好ましくありません。ただ強力で使いやすいので愛用しています。

 

ヤフオク 水晶インシュレーターの効果と音質は?

スピーカーを起こして配線をし直し、微調整しながら音を聴いてみました。結論から言って効果は高いです。様々な素材のインシュレーターがありますが、水晶は変化の度合いは大きいのに癖が少ないのが特徴です。この音が良くなった感じが強いのに変な癖がつかない水晶の特性がオーディオよく用いられる理由です。
正直に言ってしまうと、良い意味で805らしくない音がすると感じました。低域の伸びも思っていたよりもあり、ケブラーの癖や古いアルミツイーターの特性は感じられますが、より自然体で音楽を聴くことができます。プリメインアンプのプライマーにも水晶インシュレーターを入れると、よりSN感が増し、音楽に集中できるようになりました。アンプの下には50×20mmのインシュレーターを入れました。さらに、このリビングはオーディオ用に作られているため、805の潜在能力を最大限に引き出してくれると感じます。スピーカーの中央にテレビが置かれているため定位はそこまでではありませんが、部屋が左右対称なので、まずまずのバランスが取れていると感じます。何よりも水晶インシュレーターによって音のディテールが増し、ケブラーとは思えない滑らかさで、低域から高域までよりクリアに鳴ってくれます。
もともと私がケブラーの音が好きなのもあり、このSignature805のセッティングは、この先ずっと50×30mmのインシュレーターで十分だと感じます。3万円台で手に入るインシュレーターの中では、ほぼライバルはいないのではないかと感じます。少なくともリプラスの「OPT-1S HR」(8個で4万円)と比べても、推測ではありますが十分に競争力のある音質だと感じます。なぜなら水晶は容積が大きい方が圧倒的に有利だからです。

水晶インシュレーター本家であるリプラスの「OPT-GR-SS(1個10万円)」との比較については、正直に本音を言ってしまうと、「本家との違いは、現時点ではわかりません!」しかし何らかの違いは必ずあると思いますし、おそらくリプラスの方が寸法や純度の精度も高いのでさらに上の世界があることでしょう。しかし、高額になりすぎてなかなか買えるものではありません。だからこそ自作したのですが、こうなると本家を実際に買って検証しなければならないとも考えます。本末転倒ですが、こうしてオーディオの沼に浸かっていくのです。
結論を言うと、自作のインシュレーターでも水晶は効きが抜群に良いです。本家の超高級品とはさすがに何らかの差があることは間違いないですが、そこを全く知らない状態であれば、違和感なく使えるコスパの良いインシュレーターだと思います。

水晶インシュレーター気になった方は、是非ヤフオクで、「水晶インシュレーター」で検索してみてください。
また、リプラスの製品はお高いですけど品質は確かなので。余裕があるなら「OPT-100HG-FLAT」「OPT-1S HR」あたりをおすすめします。このクラスは、たまに中古でも出てくるので狙い目です。中古を見ているとわかりますがこの水晶インシュレーターはとにかく欠けやすいので注意が必要です。水晶同士を軽くぶつけるだけで簡単に欠けます。
自作水晶インシュレーターは、ヤフオクで他の方が、スパイクタイプのものや天然石のものなども出しています。それぞれちょっとした特性はあるとは思いますが、基本的な効果や方向性はおそらく同じだと思われます。ただ経験上、形状は円柱状か円形で透明度が高く重さが揃っており大きなものが効果が高い傾向にあります。

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あとがき

あとがというなの蛇足を付け加える。なんだかんだで、オーディオ的にはうちのリビングは響きが良く、縦長配置となるが、左右対称で定位も良好だ。天井や壁には吸音材がある程度入っているが、オーディオルームよりよく響くので案外気持ちよく歌えたりする。電源環境も全てのVVFケーブルを2.0に揃えたため、電圧には申し分ない。このような素晴らしい環境でSignature805を鳴らすと、叔父さんの思いも込められたかのように、かくしゃくと音楽が奏でられる。
リビングでは自由にラフにオーディオを楽しむ。テレビの歌番組や映画、アニメから、WebOSを通じてAmazonプライムビデオやYouTube、AirPlayを利用してiPadやiPhoneからAmazon Musicや自分の音楽ライブラリを楽しむことができる。なんだかんだで、自分は音楽を楽しむならばリビングが一番心地よい場所に思える。ご飯を作っている音が聞こえ、食事が終われば食洗機が稼働するが、それでも音楽や音は日常生活と調和しているように感じられる。だからこそ、音楽を楽しむ際にはリビングでくつろいで聴く方が、音楽の豊かさをより感じられる瞬間があると思う。
多くの人々は、リビングに喧騒を感じて、自分を密閉された空間に閉じこもらせたくなるかもしれない。しかし、私は異なる考えを抱いている。私にとって、リビングで奏でられる音楽は、家族と共有し、日常の営みに自然に溶け込む芸術としての意味があると思う。リビングは活気に満ち、さまざまな音が鳴り響く場所だ。テレビから流れる音声、台所での調理の音、家族の会話の声など、それぞれが独自の音を奏でている。その中に、好きな音楽が加わることで、唯一無二の調べが生まれる。それは、日常の生活に彩りを与え、心地よい響きをもたらす。リビングで音楽を共有することには、特別な魅力がある。音楽は家族の絆を深め、共通の感動を分かち合うきっかけとなる。リビングの音楽は、生活の一部として存在する。それはイヤホンや防音室のような中で孤独に聴く音楽とは異なる響きだ。リビングの喧騒の中にこそ、音楽が生き生きと輝き包み込んでくれる。私はその一体感を大切にし、リビングで音楽を楽しむことに喜びを見出している。それでも、多くの人々が静かに一人でオーディオが奏でる音楽の中に閉じこもりたくなるのも理解できる。しかし、私にとっては、リビングで音楽を共有し、日常に音楽という芸術を溶け込ませることが意味のある営みなのだ。家族と生活の中にあるその一瞬一瞬の音楽の響きが、心に深く刻まれ、豊かな人生の一部となるのだから。
そんなリビングオーディオがありつつも、真剣に音楽だけに集中したいときにはオーディオルームで、家族との日常を音楽で演出するにはリビングオーディオと使い分けることができる。そんな使い分けができる家という存在には、本当にこの上なく贅沢でありがたいことだと感じる。
ただし、Signature805はブックシェルフスピーカーであり、少しばかり古いモデルだ。オーディオへ目覚めた頃に聴いていたアニソン「創世のアクエリオン」、「冒険でしょでしょ」などを久しぶりに聴いたとき、音が驚くほど薄かったことに気づかされ、同時に懐かしさを感じ、昔の実家に置いてきた古い思い出が蘇ってきた。それでもSignature805はそんな簡単には鳴ってくれないアニソンでさえも、愛おしく感じさせてくれる。時間が経ったケブラーの黄色やちょんまげなどの要素も含めて、その存在は思っているよりも愛おしく心地良いのだ。スピーカーはあのとき見て感じた憧れそのままだった。