今年引っ越しがあると分かっていたのに、いや分かっていたからQRDを少しばかり買い足した。
現在はスピーカーの左右とデスクの上掃き出し窓の前、そしてリスニングポントの真後ろにソネックスの吸音材を置いてある。40mm厚のソネックスが部屋に5枚あるとそこそこデッドになってしまう反面、中高域のささりが大分中和されてボーカルやトランペットなどの高い音がまろやかになる。
普段部屋で過ごしていてもオーディオがおいてある部屋だけは音が反響しづらくなっており、静かで落ち着いた環境になっている。

しかしながら、オーディオとしてはすこし音を吸いすぎていると感じるようになってきた。なによりソネックスをそのまま置いておくのはあまり見た目が良いものではない。

左右にソネックスの吸音材が立て掛けてある

そこで登場するのがQRDのBADシリーズだ。
QRD BADは主に吸音を行いつつ程よく拡散もしてくれるとても賢い製品。見た目もファブリックで表面の凸凹が抑えられており、ルームチューニング材の中では非常に見た目が落ち着いている。
現在のQRDのラインナップは太陽インターナショナルが扱っているものではBADの1種類のみだ。もともとBADには部屋の端っこに置くBAD CORNER、床に設置するBAD FLOOR、そして壁に掛けて使うBAD、そこに表面の布のカラーが6種類ほどあった。それが今ではBADの一つだけそしてカラーも1種類のみと寂しいことになっている。

推測でしかないが、BADシリーズの基本は吸音だ。QRDの製品はBADだけではなくSkylineやDiffusorなどをうまく組み合わせて徐々に追加していくことを推奨している。ただ、拡散系のSkylineと違って吸音系のBADは一般的な住宅では余り必要なかったようだ。
というのも、一般洋室では吸音せずとも生活家具を置いていくうちにどんどん部屋がデッドになっていく。一般的な部屋をデッドにするのはいつの間にかなっているレベルで勝手になるものだけど、逆にライブにして音をよくしていくのはとてもお金がかかるし難しい。
加えて、値段がかなり高額だったのもラインナップが縮小した原因のひとつだろう。

それでもなんでQRD BADが必要なのか?
理由はシンプルだ。作る部屋はややライブの方向に振って作るので、吸音材は多めに用意しても良いと思う。それでも部屋にモノが増えていくうちにかってにデッドになっていくのだけど、今度の部屋は今の3倍以上広くなる。
そして、吸音系のルームチューニングではQRDのBADがとても扱いやすくデザインも自分好みなのだ。
2014年頃にQRD BAD CORNERの120cmをペアで入れたのだけど、全然足りないなと言うのが正直なところだった。
オーディオマニアなら、電源ケーブルとルームチューニング系素材はいくらあっても困らないと思うのだ。

今回、追加でQRDのBAD2枚とDigiwave2枚を導入してみた。

Digiwave滑らかな曲線がルームチューニング材とは思えない美しさ

QRD BAD

とにかくシンプルな正方形。絵画のように壁にかけて使う

付属の取り付け金具

位置をささっと計算して金具の取り付け位置を決める

 ピン2本を壁にさくっと打ってあとはかければそれでおk。
そう思っていた。これが思いの外大変だった。足元はPASSのパワーアンプがあるしコンベックスで大工仕事の如く位置を慎重に測りながら鉛筆で目印を書いていくのだけど、オーディオを傷つけないようにとか考えて居たら思いの外力が入った。

BADをかけるときも裏面をフックでガリッとやらないように慎重にかける。
QRDの壁掛けは案外難易度が高い。BADCORNERの壁掛けのときもそうだったけれど、すんなりとは嵌まってくれないし、意外と重いのだ。
左右対称に取り付けるともう息が切れた。
設置の様子を動画に撮ろうと思ったがそれ以前の話だった。アキレス腱をすこし捻ったのか引っ張ってしまったのか足に違和感が…、朝起きると右足が腫れて足が伸ばせなくなっていた。オーディオをやっていてここまで痛い思いをするのはあのB&Wのスパイクを付ける作業以来だろうか、あのときはそけい部に激痛が走った。オーディオをやっていくのは体力&筋力勝負なところがある。軟弱者は落ち着いて電源ケーブル交換を楽しんでいた方が身のためかも知れない。オーディオ業界には身体を壊している人が多い。

BADの壁取り付けを終えて、Digiwaveを設置する。こちらは取り付けると大仕事になってしまうので今の部屋では床に置いておくだけにした。
最初に、スピーカーの中央に二つ並べるとこれが余りよろしくない。スピーカーの真ん中はどうやら吸音してはいけない何かがあるらしい。
少し移動させながら聴いてやるとスピーカーの真裏辺りが丁度良い。最終的に見栄えも含めて位置は戸棚の前に決まった。

壁に掛けたBADはもとからそこにあったみたいに整然とある。できれば一時反射ポイントに設置するのが好ましいがこの部屋では窓と扉があってそれができない。
Digiwaveも同様に本来の推奨位置ではないが、スピーカーの真裏は吸音しても大丈夫なポイントらしくちゃんと余計な音を吸っている印象だ。
ソネックスで吸いすぎていた音がすこし蘇ったような感じがした。これでもまだ吸音が過剰にされている感じはするけれど、おそらくは石膏ボードの上に張られたビニールクロスに音を反響させるよりもBADを介した方がずっと良好だ。
くしゃみをすると部屋にキンと音が軽やかに響き渡るのが感じ取れた。ソネックスでは吸音しすぎていた。

うちの部屋にはお地蔵さんがいる。特に意味はないけれどオーディオ地蔵。

サンセベリアが二つ置いてあるちょうど間は本当にスピーカーの聖域らしく、できればラックもパワーアンプも置かないのが良いらしい。ここに物を置いて音が良くなったためしがない。アンクⅢが後方に置いてあるけれどこれもスピーカーの間の一直線上~前面よりもだいぶ後ろが良好だ。
サンセベリアの二鉢も実は余りよろしくない感じがするがとりあえず置くところがここしか無いので妥協案として置いてある。新しい家でどこに置いてあげるかちょっと悩みどころだ。

QRD BADの傾向は基本デッドなので一般洋室や特に和室で使うときは注意が必要だ。できることなら仮置きして効果を確かめた方が良い。
しかし現在CORNERもDigiWaveも中古でしか手に入らないからよく考えて買うしかない。基本的には特定の場所以外ではあまり必要のないものだと思う。

使うとしたら、一時反射の左右の壁面がベストであとはリスニングポントの真後ろ辺りだろうか。
スピーカーの間にはサウンドハウスで売られているこちらを推奨したい。効果はアンクⅢと同じような感じ。音像をよりクッキリと音に奥行きを与える。オーディオショウではD&Mマランツのデモでよく使われているやつだ。

AURALEX Sustain Prism 調音パネル 2枚

余談。QRDなどで部屋のルームアコースティックを行っている人を見ると、ああこの人かなり金持ちなんだなと昔はよく思っていた。実際問題結構なコストがかかるのは事実なのだけど。
Digiwaveなんかはかなり高額で壁にあるだけでなんとなくその部屋が上質に見えたりもする。あの高級ファブリック素材の緩やかなカーブ、Digiwaveにはちょっとした憧れがあった。
ルームチューニングはお金もかかるしなによりものが多く必要になるだけに手間も非常にかかる。しかしこれを無視していてはスピーカーの音は良くならないと思う。
そう考えると床も天井も部屋全体が専用に設計されたオーディオルームというのは非常ーーーに贅沢である。

おわり。

 

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