■たばこが嫌い

子供の頃からたばこが嫌いで仕方なかった。
臭いとにかく臭い。タバコを吸っている人とすれ違うだけでも、タバコ臭い人が近くに居るだけで気分が悪くなってしまう。
目は痛いし鼻はもういわずもがな口や喉もなにかぶつけられたようで肺もなんだか気分が悪い。
医学的に見てたばこアレルギーという病名やアレルギー症状は存在しないのだけど、いつかは分からないが都合の良い大人がニコチンやタールに対するアレルギー反応があると言うことさえもこの世から消してしまったらしい。
こんなに臭くて気分の悪い物を吸っている大人が理解できないまま自分もまた大人になってしまった。ただ大学も行かずに引きこもり続けた自分には喫煙なんてまるで縁がなかった。
たばこ以外にも線香の煙も結構な確率で目がしみて喉になにか違和感が出てくる。
アスペルガー特有の感覚過敏だけではないアレルギー的反応を感じる。

■VAPEとの思わぬ出会い

自分はもう15年くらいはマジックを生活の一部のようにやっているのだけど、あるときスモークギミックなるものを知った。「ウルトラスモーク2000」だ。なにもない手からモクモクと立ち上る煙がとても幻想的でロマンがあった。しかしウルトラスモーク2000には使われている薬品が危険な物であり金属を錆びさせ人体にもあまり良い物ではなかった。
それから数年後、「ピュアスモーク」という新しい原理を用いたスモークギミックが発売された。ピュアスモークの売りはなんと言っても安全性で子供やペットにも安心で嫌な臭いもなく吸っても安全だという。
当時の自分にはちょっと高かったけれど、急いで買った。
このピュアスモーク、お察しの通り、電子タバコにエアポンプを取り付けたものだった。

ピュアスモークを手にした自分は、その明らかにタバコの見た目をした怪しいガジェットを恐る恐る使った。ポンプのポポポッという音と共に白い仄かにあまい香りがする煙がすーっと出てきた。ちょっとアブナい遊びをしているような気分で口に含んでみると意外とすんなり煙を吐くことが出来た。
おそらくこのピュアスモークに取り付けたる電子タバコのカートリッジの中身にはおそらくグリセリンだろう。

そうしているうちに大元のVAPEに興味が移りだした。というのも、ピュアスモークの煙はあまり量がない。Youtubeの電子タバコ動画を見ると凄まじい量の煙を吐いている動画が沢山ある。
早速、Amazonで適当にVAPEキットとリキッドを買った。Amazonが中華に汚染されていることも知らずにAmazonの検索で上位に来てレビューが多い商品を無作為に選んだ。セットで4千円もせず、ピュアスモークと比べるとえらく安く手軽に感じた。

■初めてのVAPE体験

人生初のタバコ(VAPE)は中華の適当なVAPEキットとグリーンアップルメンソールリキッドになった。
届いて早速箱を開けると、まず蓋を開けていないリキッドの強烈な香りに驚く。次に蓋を開けるとさらに臭いは強くなる。これを吸うのかとやや戸惑いながらもすこし高いテンションでアトマイザーのタンクへリキッドを注ぐ。
アトマイザーのスイッチを入れて、恐る恐る吸う。念のため台所へ移動して換気扇を回した。白い煙が出たそして軽い青リンゴの香りとメンソールの強烈な刺激臭がする。これはだめだと思い外へ出る。

父とは母が車庫と庭で作業している初夏の曇り空の下、VAPEをおもむろに吸う。タバコとはまったく別物の香りの付いただけの水蒸気を吸っているだけなのに明らかに目が痛いようだしなにより喉にがつーんとストレートが入ったように強い刺激が来る。
味はまるで1時間は噛んだアップルミントガムのようで気持ち悪い。なにより口へのアタック感が凄まじい、一度肺へそのまま吸い込もうとすると強烈に咽せる。悪いことにアトマイザーの扱い方がよく分からないまま吸い始めために、暫くすると明らかに焦げたような臭いが充満してきて苦みを強く感じる。

初めてのVAPEとにかくビックリした。高々800円のリキッドではあるがこんなにも口や喉に刺激が来るのかとそしてこんなにも苦しく臭いのかと。
子供が生まれる前間でパイプで喫煙を楽しんでいた父ですらこのメンソールリキッドは臭い臭いと煙たがられた。
紙巻きタバコと比べたら安全性が高く有害物質が限りなく無いに等しいVAPEでさもこんなにも苦しく臭く不味いのに、どやって喫煙者はタバコを好きになったのだろうか?
ちょっとどころではない臭さ意外にも煙を口へ気管支へ肺へ入れるとこんなにも痛く苦しいのかと絶句した。
調べたところに寄ると、たばこのニコチンは1週間や2週間毎日吸ったところで中毒にはならないという。普通に考えて正常な人間なら、あの圧倒的な臭さや口や喉への刺激で「これは毒だ、身体に取り込んではいけない」と判断するのが普通だろう。
なにより、身体がニコチン中毒になる前のただ臭くて辛いだけのたばこをなぜ中毒になるまで何ヶ月も吸うことが出来るのか甚だ疑問しか浮かばない。
世の中には、軽いたばこつまりはタールやニコチンが少ないたばこも沢山ある。いきなりセブンスターを吸える人はただ強がってるだけだ。

■半年後、引きこもりVAPE再挑戦

たばこへの疑問がさらに深まった頃、YoutubeのオススメでやけにgoogleがVAPEを推してくるようになった。常に暇な自分はYoutubeに面白そうな動画あればとりあえず見るしかない。いつの間にかVAPE系ユーチューバーの「Ryusei Sakaue/阪上 龍生」の動画を暇があれば見るようになった。
そしていつの間にか、べぷろぐ初心者向けVAPEセットを買っていた。

それが、ジャストフォグの「FOG1」。
しかしなぜ新しくまたVAPEセットを買ったのかと言えば、最初に買ったアトマイザーの評価を見ると微妙だったそして暫く封印したみたいに放置するとバッテリーがすっかり抜けて弱り切っていた。
あれから一度も吸っていなかったリキッドも変色して腐っていたようで捨ててしまった。
阪上氏の動画をじっくりと見ていくうちにVAPEの吸い方や扱い方が分かりVAPEの世界について大分明るくなってきた。
なにより、リキッドのメンソールは粘膜への刺激を楽しむもので、そういった刺激物がなにも入っていないファンタジーグリセリンという物があることを知った。

PGとかVGってなに? | yuukizy703のブログ

リキッドには「VG」と「PG」の2種類のプロピレングリコールとベジタブルグリセリンが主な成分であり、これらは化粧品やグミなどのお菓子など食品にも添加物として入っており安全性は確かに高い。
そしてグリセリンといえば、便秘の時の浣腸として使われるつまりは直腸の粘膜に触れて吸収されても問題ないのだ。そりゃ食品添加物だし…
そして、VGは仄かに甘くVAPEの煙を構成する主成分であること。
超感覚過敏な自分にはもはやVGの甘みのみでVAPEが吸えるのではないかと考えた。

VAPE系youtuberオススメのVAPEと無味無臭のグリセリンを買って、再度VAPEにチャレンジした。今度は、VAPEトリックも出来たらいいななどと考えながら。
グリセリンを吸ってみると確かにうっすらと甘い香りそしてFOG1の濃くて大量の煙り。これはちょっと楽しいかも知れない。
口へ含んではき出すとそこはもう真っ白だ。Youtubeの輪っかの出し方講座なんていう動画を見ながらVAPEを吸っているとすこし輪っかも出すことに成功した。
天井へ向かってモクモクと浮かぶ煙を眺めているだけで何となく気分が良くなってくる。
Fun with Fractals? | Psychology Today
フラクタルのような物を眺めているだけで人は60%ストレスを軽減できるなどという論文もある。

VAPEには2つの吸い方があるという。
1.たばこ吸い (MTL)
2.肺吸い (DL)
MTLは一度口に含んでから肺へ入れる方法で、2は深呼吸するみたいに直接肺へ入れる方法だ。
これまで自分は口の中で留めておいた。いわゆる”ふかし”というやつだ。
輪っかを作っているうちに肺まで煙を貯めないときれいな輪っかが出来ないことに早々と気づく。
メンソールが入っていない、ただのグリセリンだったら苦しくないはず。そう思ってDLをおこなうと、今までに無く激しく咽せた。どうにも口や喉では感じなかったがもっと繊細な肺の粘膜では異物としか感知できなかったらしい。懲りずに二回目を試すとさらに強くおぅぇえええっと胃の中まで吐きそうになった。若干の過呼吸を感じつつ。そっとVAPEを机においた。

そういえば、今日はやたらに鼻や喉の分泌液の量が多い。つまりは鼻水、痰が出ている。ちょっと喉がイガイガするようないつもより声がハスキーな感じだ。粘膜を荒らしているとまではないがどうも、粘膜への刺激には変わりないらしい。
アニメを見ながらiPadで適当に情報収集をしながらずっとVAPEを吸っているとなんだか飽きてくる。いや飽きたと言うより疲れてきた。こんなに口で空気を貯めて吐いてを繰り返すこともそうそうない。
なにより若干であはるがこのグリセリン甘みの奥にえぐみがある。VAPEでは加熱された蒸気の他に、加熱しきれなかったリキッドがドリップチップまで上がってくる。吸い込みが弱く加熱ユニットにリキッドがたまるとスピットバックと呼ばれるリキッド跳ねが起きる、これは唇や下をヤケドしそうなほどアツイし苦みが強い。
DLでしっかりとアトマイザー内を換気出来ていれば温度が上がりすぎず中の蒸気化したリキッドも全て吸えるので跳ねは起きないのだけど、蒸かしで吸おうとするとどうしてもスピッットバックが起きる。それが苦くて熱い。

こんなに苦しくて臭いたばこどうやって中毒になれるんだ…?
グリセリンでこの咽せ方ではたばこをふかすだけでもどうなるかもはや予想できない。

■引きこもりがVAPEを吸いながらVAPEが日本で流行らない理由を考える

なぜ人はVAPEを吸うのだろう?喫煙したいから?たばこの代わり?香りや味を楽しみたいから?メカニカルなガジェットをもとめているから?
VAPEを初めても辞める人がほとんどだという。それが禁煙を失敗したとかアトマイザーの管理が面倒だからとかりっきどが案外高いとか色々な理由があるようだけれど、一番は、中毒にならないからだと思う。なんといっても、日本ではニコチン入りのVAPEリキッドの販売は禁止されているからだ。
もし一般に吸われているたばこにニコチンが入っていなかったらまたそのような中毒を催すような成分がなかったら、たばこを吸っている人はおそらくVAPEを吸っている人よりも少なくなることは間違いない。
なかには、リラクゼーションやコミュニケーション、休憩などの意味でたばこを吸っている人は沢山いると思う。でも基本的には吸っているのではなくニコチン中毒になった脳に吸わされている状態だと思う。
なにせ、中毒になる物質が何もなく煙が沢山出てだれでも気軽に始められるVAPEがこれだけ流行っていないのだから。

確かに1週間ばかりグリセリンとメンソールの入ってないお菓子系リキッドを吸ってみて、”咥える”、”吸う”という感覚の面白さや、煙の幻想的な模様、フーッと息を吐く感じ、良い匂いで満たされるような感覚。
これは確かに、感覚的に情に訴える良さを感じた。ただ、続けようとはあまり思わない。人工香料の匂いは結構強烈でやり続けたら当たり前のように気分が悪くなる、無香料のグリセリンは苦みを感じる。なによりMTLでも肺に入れると吐くように咽せるしかない。

こればかりは身体が丈夫で煙が好きで、元喫煙者など喫煙行為が恋しいけどたばこは吸いたくない人など、VAPEを吸いたい人はかなり限られてくると思う。

■たばこって何だ?

しばらくVAPEを吸ってみて、たばこについて少しだけ理解できるようになったかも知れない。香料でさえも部屋を臭くしないように換気しながらとか台所の換気扇の下で吸ったり…なによりVAPEでさえも家族に友達に煙たがられるという感覚を知った。自分が好きで吸っているものをなにそれっ!と遠ざけられるのは思いの外、心が痛かった。
これまで関わってきた喫煙者に対してやはりどうしても、冷たく当たっていたと思う。
それでもあんなに辛く臭い煙を吸っているのはやはりニコチン中毒以外何物でも無いと思う。
もしニコチンは関係ないという人が居たら、VAPEに切り替えてみて欲しい、健康害がないし増税もない匂いもたばこほどきつくない。良いことだらけなのに、すぐまたたばこに戻ると思う。

■たばこがただ嫌いと言うだけでは世の中渡っていけない

やはりどうしても喫煙者というのは身近にいる。その人達と縁を切って生きていくなんて事は出来そうにないし、またその人に喫煙を強要することもできない。
今だったら、兄弟だったり、訪問看護の看護師さんだったりオーディオショップの担当だったり友達だったり、たばこ臭のきつさはいろいろあれど、やはり身近に喫煙者は必ず居る。引きこもりの自分ですらこれなのだから、世の中の超たばこ嫌いな人がどうやって生活しているのかちょっと気になるくらいだ。

しかし、嫌いだと被害者ぶっていただけでは関係がうまく回らなくなってしまう思う。ただどうしたって臭いのだけど、ニコチン中毒になっている以上は仕方ない。「自分の前ではたばこ吸わないでね!」くらいのことは言っても良いかもしれないけれど、やめろとは到底言えない。
なぜなら、そうやっていちいち言い合いになったり、説教していてはキリがないし、自分は誰かのたばこを止めさせるために生きているわけではない。人生の時間は思っている以上に短い。嫌いなことへ目を向けて居る時間は本当にないと思う。

自分が出来るのは精々、近年徐々に落ち着いている喫煙率がさらに下がることをゆっくりと見守ることくらいだ。
本当を言えばたばこなんて無いのが一番だ。だけど世界中をめぐってそういう、誰かが嫌いな物が一方的になくなってしまう世界の方がもっと嫌かも知れない。人はもっと自由であるべきだと思う。ただやはり喫煙者はニコチン中毒になっているとしか思えないけれど。

なによりまずは外へ出よう。

おわり

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