オーディオルームの住み心地と聴き心地

引っ越しから6年を迎えて

12月9日でこの家に暮らし始めて6年になります。
今日は、私が作ったオーディオルームの「居心地」とハイエンドオーディオとの向き合い方について、正直な話をしていきたいと思います。

おそらく、多くの人にとって想像の範囲を超える内容かもしれません。長年オーディオを嗜んできた方でも、理解しにくい部分があると思います。それでも最後まで耳を傾けてくれる方に向けて書いています。

ここは、人生をオーディオに捧げた「ひとりのオーディオマニアのリアルドキュメンタリー」です。

 

私の前提:感覚過敏と“養生の部屋”としての設計

私は手帳持ちのアスペルガー(発達障害)で、聴覚や嗅覚といった五感すべての過敏さに人生を通して悩まされてきました。HSP気質も強く、こだわりや過敏性が強く脳も神経も疲れやすいです。

だからこの部屋は本来、音響を追求する以上に「体と神経が休められる場所」(=センサリールーム)であることを大前提に設計しました。

  • 珪藻土の壁

  • 明るい光

  • 開放的な空間

  • ほどよい防音

 以前、長岡技科大の無反響室に入る機会があり、無反響室のような“完全な静寂”は人が住む環境ではないこともわかっていました。無反響室はまるで3DCGの中や宇宙空間にいるような不安定感と浮遊感や耳の圧迫感などの異質さがあります。
同様に、トリノフST2という補正機械で、位相も周波数も完璧に整えた音を聴いたとき、音の精密さや音像の近さに息苦しさを感じた経験もあります。

だから、オーディオルームであって、オーディオルームになりすぎない部屋を目指したのです。


数値で証明された「理想的な音響」

ここ1年、REWを使い測定と分析を重ねてきました。
その結果──

  • 周波数特性はほぼフラット

  • 左右対称性も極めて高い

  • 残響は350〜400msで理想的

  • 明瞭度C80(18dB)・D50(95%)とも良好

  • 暗騒音は夜間31dBまで下がる

性能は完全に「リファレンスクラス」。

音楽を再生すると、歌手の体温も湿度も匂いも感じるほどリアル。音がまさしくそこにある。音が生き物になり、こちらに触れてくる。1日だけなら、最高の音体験が約束される空間です。


しかし──完璧な部屋は脳にとって完璧ではなかった

引っ越してきてから、メインシステムで音楽を聴くことがどんどん辛くなっていきます。

理由はシンプルです。

「リアリティが高すぎる。」

そこに人がいる気配があるのに、実際には誰もいない。
HSP気質もあり、脳が常に分析モードに入ってしまい、楽しむ余裕がなくなる。
優秀録音ほど、音像がぶつかってくるようで怖くて触れられない。

それでも、無音もまた苦しい
軽防音にも関わらず、完全な静けさが耳を押しつぶしてくる。壁や床などの空気の揺らぎが少なすぎて逆に脳が警戒してしまう。無音から音楽を流すと、バッと人が飛び出てきたようでこれもまた脳が非常に警戒する。

音を出しても辛い、無音でも辛い。
まるで常時アトラクションに乗っているような緊張感。

外の気配がしない、音楽と自分だけがここにある、世界から切り離されたような密閉感。
自分がそこに存在している感覚すら曖昧になる。
音楽を聴いても無音でも息苦しい。


「理想」は人間にとって少しだけ不完全でいい

測定上は成功。短時間なら誰もが称賛する部屋。

でも、人間の脳は完璧な世界に住むようにはできていない。らしい。

ハイエンドオーディオの深淵を覗いた人間が燃え尽きたり、機材を手放したりする例があるのは決して珍しいことではないのです。噂話でもオーディオを”辞める人”の話を聴く機会は案外多い気がします。

私はいま、その波の上にいます。


今の私を救っているのは「適度な生活音」

最近はリビングで

  • 冷蔵庫の音

  • 換気扇の風

  • 家事の気配

そんな生活音の中、小さな音量で805 SignatureやiPad Airの音を聴く方が心地よい。ほどほどのオーディオがどれほどリラックスして聴くことができるのかを実感しています。

オーディオルームは、いまだ私にとって“課題”であり“資産”です。


結論:この部屋はまだ「未完成の夢」

「無駄だったのか?」
その答えを出すにはまだ早い。

なぜなら、

  • ここはブログやYoutubeなど創作の集中力が最高に発揮される場所でもある

  • 眠れば深く休める場所でもある

  • 人を招けば唯一無二の体験を提供できる場所でもある

私にとって音楽は、生きる理由です。
そしてこの部屋は、その理由と向き合うための
もっとも厳しく、もっとも美しいステージ。

過ぎたるはなお及ばざるがごとし。
オーディオと人間の境界線の先にあるもの。
私はその問いの中に、いまも生きています。


終わりに

この部屋は、成功でも失敗でもない。
壮大な実験であり、まだ続いている挑戦です。

私はまだ、音楽を諦めていません。
だからこそ、きっとこの先にも答えがあるはずです。

なにより、私は、ハイエンドオーディオをネットで見てこんな世界があるんだと興味を持ち、それらを実際に”体験”したらどうなるか?という純粋無垢な疑問をもち、実際にハイエンドオーディオを超えてオーディオルームまでそろえてしまいました。

今後、このオーディオ研究がどうなるのか?オーディオ趣味のその先を見ていきたいと思います。

らーめん「ニンニクなし、野菜少なめ、アブラナなし、麺柔らかめ少なめ、ひとつ!」コショウはちょっとかけますよ。